シングルマザーの平均的な年収は200万円台と言われており、大きな出費があるとすぐに家計が苦しくなります。
子供がいると急な出費もあるから、ちょっとしたきっかけで借金に苦しんでいる母子家庭も多いでしょう。
この記事では借金に苦しんでいるシングルマザーの対策を解説します。
借金に苦しかったら自己破産しても良い
いきなりですが、借金に苦しんでいるシングルマザーは一度は自己破産を考えたことがあると思います。
安易に自己破産を勧めるわけではありませんが、母子家庭で借金の返済に苦しんでいる人にとって自己破産は有効な手段の1つです。
自己破産と聞くと世間的に悪いイメージがありますが、れっきとした法律に基づいた債務整理です。
事実、自己破産で自分と子どもの生活をゼロからリスタートして幸せに生活している家庭もあります。
「借金がなくなるのはいいけど、子どもの将来にリスクはないの?」と不安を持つ人もいるでしょう。
確かに一定のリスクはあります。例えば、自己破産をした親は子どもの高校や大学進学の際に、奨学金をもらうための連帯保証人になれないケースがあります。
自己破産をした人は、一定期間ブラックリストに登録されるためです。
ただ、ブラックリストの登録は自己破産の場合は10年で抹消されます。子どもが小さいうちに自己破産をしておけば、保証人になれないリスクを避けることが可能です。
また「自己破産をすると実名が世間に公表されると聞いたけど…」と心配する人もいます。確かに、官報という国が発行する機関紙に名前が載せられますが、一般の人はほとんど見ないのでリスクはほぼないと言っていいでしょう(関連記事:官報とは!自己破産すると「官報に載る!」っていうけど、どういう意味?)。
今、借金の返済で苦しんでいる人は将来設計を早めに立て直せるようにするためにも、できるだけ早く自己破産などで生活を再建すべきです。
まずは弁護士に相談し、任意整理や個人再生で借金の減額を検討することから始めるといいでしょう。
母子家庭のための公的な救済制度
自己破産をしても公的手当をもらうことができます。
そもそも公的手当は、自己破産などによる差し押さえが禁止されている債権(差押禁止債権)です。
自己破産をしても利用できる公的手当として主な種類は、以下の5つです。
児童扶養手当
ひとり親(母子家庭・父子家庭)のための手当で、都道府県の各自治体から支給されます。
離婚や死亡など理由は問いません。
0歳から18歳になって最初の3月31日(年度末)までの年齢の子どもがいる家庭が対象です。
支給額は所得や扶養人数によって変動します。
区分は2つで「全額支給」、「一部支給」です。
例として、全額支給の場合は以下の金額です。
・子どもが一人の場合 42,000円/月
・子どもが二人の場合 47,000円/月
・三人目以降は一人増えるごとに3,000円加算
所得が一定以上ある場合は一部支給となり、この支給額から引かれた額になります。
支給額は申請が受理された翌月からの計算になる、という点にも注意しましょう。支給されるタイミングは4ヶ月に一度です。
母子家庭の住宅手当
自治体によりますが、住宅手当を支給しているところもあります。
条件としては、母子家庭であること以外に、「家賃が10,000円以上の民間の貸家に住んでいる」、「20歳未満の子どもを扶養している」、「生活保護を受けていない」などがあります。
支給額の上限は10,000円という自治体が多いようです。
細かい条件や内容は自治体によって異なるため、窓口で直接確認することをお勧めします。
医療費助成制度
世帯主や子どもの医療費が無料もしくは減額になる制度です。
児童扶養手当と同じく、0歳から18歳になって最初の3月31日までの間の年齢の子どもがいる家庭が対象です。
ただ、細かい内容や条件は自治体によって異なります。
また「扶養する子どもが1人の場合は所得が230万円まで」など、一定の所得制限もあるため誰でも受けられる制度というわけではありません。
遺族年金
親のどちらかが亡くなった場合にもらえる給付金です。
額は、亡くなった人の公的年金への加入年数、配偶者と子どもの年齢、現在の所得、などによって変わります。
年間655万5,000円以上(年収850万円以上)の所得がある場合は支給対象にはなりません。
また、亡くなった人が厚生年金に一定期間以上加入していた場合は、遺族厚生年金の受給対象となる可能性もあります。
先述した公的な遺族年金(遺族基礎年金)よりも受給対象者が広いことが特徴です。
死亡した人に生計を維持されていた配偶者と子どもは全て受給対象者となります。
ただし再婚した場合は受け取れません。
母子父子寡婦福祉資金貸付金
ひとり親の家庭および寡婦(配偶者がいない女性でかつて母子家庭の母親だった人)の、経済的自立を図るために資金を貸し付ける制度です。
進学などにかかる子どもの教育資金や、親自身の就職のための技能習得、転宅などを支援するために設けられています。
もらう目的が教育資金の場合、日本学生支援機構が設けている「奨学金」を利用するよりも優れている点があります。
それは、どんな子どもにも原則「無利子」で貸付られるという点です。
奨学金は学力の高い優秀な学生にのみ、第一種奨学金として無利子で貸し付けられますが、母子父子寡婦福祉資金貸付金にはこうした条件はありません。
支給額は自宅から通う場合、公立大学で45,000円/月、私立大学で54,000円/月です。自宅外からの場合は、公立大学で510,000円/月、私立大学で640,000円/月です。
生活保護は借金があるともらえない
借金を返済中の場合、基本的には生活保護をもらうことはできません。
国民の税金から捻出された生活保護費を個人の借金返済に使うのは、倫理的に正しいとは言えないからです。
厚生労働省からも、「保護費から住宅ローンを返済することは、最低限度の生活を保証する生活保護制度の趣旨からは、原則として認められていない」と定められています。
稀に、ネット上で「生活保護費をもらいながら借金を返済したり新たにお金を借りたりしてもバレない」などという情報を見かけますが信用しないようにしましょう。
福祉事務所や自治体は、生活保護受給者の銀行口座や収入の申告の有無などお金の流れをしっかりと管理しています。
生活保護費をもらうには、まず借金をなくすことから検討することが必要です。
ケースワーカーなどに相談した場合も、生活保護費の受給よりも先に自己破産を含めた債務整理の検討を勧められることがほとんどです。
生活保護法第62条には、「被保護者はケースワーカーの指示・指導には従うべき」という旨が定められています。
これから生活保護を受けようと考えている人に向けて、厚生労働省が定める「もらう前に実施される調査の概要」を載せておくので参考にしてください。
・生活状況等を把握するための実地調査(家庭訪問等)
・預貯金、保険、不動産等の資産調査
・扶養義務者による扶養(仕送り等の援助)の可否の調査
・年金等の社会保障給付、就労収入等の調査
・就労の可能性の調査
まとめ
繰り返しますが、母子家庭だからという理由で自己破産ができないということはありません。
むしろ将来のために自己破産が勧められるケースもあります。まずは弁護士や自治体の福祉・生活の専門部署に相談することから始めましょう。