これから自己破産を考えている方やすでに事故破産手続きを開始している方で、「自己破産を行うと引っ越しできなくなってしまうかも」という不安をお持ちの方は多くおられます。
破産手続き中、又は破産後の引っ越しには、何か特別な事情や許可が必要になるのか、気になる部分は沢山あると思いますが、自己破産と引っ越しは破産法によって明確に定められています。
この記事では、結論として自己破産をすると引っ越しはできるのか?何か条件が必要なのか?など、自己破産と居住移転に関する疑問を解決できる内容にまとめています。
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自己破産すると引っ越し出来ないのは誤解
「自己破産すると引っ越し出来ない」というのは誤解、というか少し現実とは違う表現です。
その理由を説明していきます。
自己破産の9割は同時廃止だから関係ない
破産手続きは、財産のすべてをお金に換えて各債権者に分配する手続きですが、自己破産には「同時廃止事件」と「破産管財事件」の2種類があります。
同時廃止事件は換価処分できる財産がないことが明らかである場合に、破産手続き開始と同時に廃止決定がされることから同時廃止という名称が付いています。
一方、破産管財事件の場合は、破産手続きの原則である、申立人の財産を各債権者に平等に分配するために破産管財人が選任されることになり、管財人が財産の管理業務を行うことになります。
自己破産手続きの開始決定と共にいずれかが決定することになりますが、自己破産手続きにおいて9割は同時廃止が占めています。
同時廃止の場合は、居住制限が付きませんので、結論として自己破産しても自由に引っ越し出来ます。
ただし、同時廃止の場合でも住所が変更になった場合は、速やかに裁判所に変更後の住民票を届け出る必要があるのですが、これだけでは「送達場所」が変更できません。
送達場所とは、裁判所から破産手続きに必要となる様々な重要書類を受け取る場所のことで、ここに記載されている場所・受取人へ郵便物が贈られることになります。
弁護士に依頼している場合は、弁護士事務所が送達場所になりますが、自分で破産手続きを開始した場合は「送達場所の変更届」を裁判所に必ず提出する必要があります。
送達場所と住んでいる住所が違う場合でも、裁判所は送達場所に記載されている住所に郵便物を送ることになり、たとえ本人が受け取ることができなかった場合でも、受け取ったのと同じ効果がありますので注意してください。
ただ、破産管財事件の場合は許可が必要
破産管財事件の場合は手続き期間中、居住移転に制限が付くことになります。
これは破産法第37条により「破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その住居地を離れることができない」と定められています。
もちろん、禁止ではなく制限ですので、裁判所から許可を得ることで引っ越しが可能になります。詳しくは、変更後の住所及び破産管財人の同意を得たうえで、その旨を記載した上申書を裁判所に提出し、許可を願うことになります。
なぜ許可が必要か?
なぜ破産管財事件の場合は裁判所から許可を得る必要があるのかは、申立人の逃亡や不当に財産を隠す等の行為を防ぐためです。
だから、財産が残っていない人が利用する同時廃止の場合は、引っ越しの制限はないわけです。隠す財産が無いので当たり前ですね。
裁判所の許可を受けずに勝手に引っ越しをした場合は、免責不許可になることもありますので、くれぐれも注意してください。
裁判所への申し立ては難しい?
破産管財事件で引っ越しする場合は、破産管財人から署名・押印をいただいた「移転許可申立書」と「新住所の住民票」を裁判所に提出します。
詳しくは、裁判所から許可を得てから引っ越しするのではなく、先に新たな居住地を用意し住民登録を変更たうえで、新たな住所に変更してもいいのか、裁判所から許可を仰ぐことになります。
この場合も、居住移転と同時に送達場所を変更したい場合は、送達場所変更の届出を行う必要があります。
破産を行う方は、破断手続と同時に無職になる方など、諸所の事情があることから引っ越しを余儀なくされる方も多く、不許可になるケースはほとんどありません。
このため、破産管財事件の場合は引っ越しに制限が付くとは言っても、裁判所への申し立てで許可を得ることは決して難しいことではありません。
免責が確定すれば引っ越しは自由
もともと居住制限の付かない同時廃止はもとより、一定の居住制限が付く破産管財事件の場合でも、破産手続きで免責が確定すれば居住制限はなくなりますので自由に引っ越しすることができます。
ただし、これは居住移転に制限が付かないだけで、当然のことながら賃貸契約を締結するには不動産会社が委託する保証会社の審査をクリアする必要があります。
問題は、最近の賃貸契約においてジャックスやオリコ、アプラスなど、クレジットカード決算を導入している不動産会社が増えています。
この場合は保証会社がクレジット会社となり、クレジットカードの審査同様に信用情報機関であるCICで信用情報を観覧することになりますので、ブラックリストに登録されている期間中は審査を通過することができません。
とは言え、信販会社でない民間の保証会社の方が圧倒的に多く、CICに照会する信販系保証会社特有の審査方法を避けることで、住む場所を選り好みさえしなければ、賃貸契約が可能です。
自己破産後の引っ越しは保証人で苦労する?
同時廃止なら、自己破産中や免責決定後に引っ越しすることも問題ないことがわかりましたね。
でも自己破産した後に引っ越す場合、保証人を要求されたりして、引っ越し先の確保に苦戦するって噂もあります。
そうは言っても、自己破産によって借金を帳消しにする方が生活を立て直すうえで絶対に重要なのですが、自己破産後の住宅問題が気になる人は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:自己破産後の住居が心配!賃貸住宅は借りられる?追い出されない?
まとめ
自己破産をすると引っ越しできないという噂があるようですが、実際は、自己破産をしても居住制限が付く可能性は限りなく低く、問題なく引っ越しできますので安心してください。