マイホームを持っているけど、住宅ローンの負担が重くて、借金返済に苦しむっていうのはよくあることです。
そしてマイホームっていう財産を持っていると、めんどくさい自己破産方法である管財事件になってしまうって聞いたことがある人もいるかも知れません。
住宅を持っていると管財事件になる?
管財事件になる場合というのは、基本的に、換価(財産を現金にかえること)できる財産がある場合です。
住宅などの不動産は、それだけで数百万円~数千万円もするような高額な財産です。
ですから、持っていれば、それを換価(換金)して債権者への返済に充てることとなるので、管財事件になるケースが多いと言えます。
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住宅を持っていても管財事件にならないケース
不動産を持っていても管財事件にならないケースもあります。
それは「オーバーローン」の場合です。
持っている不動産に担保をつけている負債の残額が、不動産の価値の1.5倍以上である状態をオーバーローンといいます。
その場合、不動産を売ったとしても、管財事件の財団(お財布)に、お金がほとんど入ってこないと推定されるからです。
ですから、オーバーローンである場合、「不動産の売却は、担保をつけている債権者と、不動産の所有者本人とでやってください。
それ以外に裁判所でやることはないですか?なければこれで終わりますね」という状態になります。
そのため、担保のついている不動産以外にめぼしい財産がない人で、免責不許可事由に該当せず、オーバーローンが明らかな場合は、管財事件ではなく、同時廃止事件になる可能性が出てきます。
少額管財事件の適用
自宅の他に無担保の不動産を持っていたり、免責不許可事由があったりする場合、自宅がオーバーローンであっても管財事件になります。
管財事件には、通常の管財事件と少額管財事件の2種類があります。どのような場合、少額管財事件になるのか見てみましょう。
管財事件と少額管財事件の違い
さて、ネット上では、少額管財事件になれば、通常の管財事件より予納金が少ない、や、かかる費用が少ない、などと書かれている記事を散見します。
しかし、その運用が始まったのは平成11年の話で、すでに約20年前の話になります。
昔は、管財事件の場合は最低でも50万円必要だった予納金ですが、管財事件の運用を簡便にし、管財事件にしやすくするために少額管財事件とういう制度が導入され最低金額が20万円程度に引き下げられました。
現在、少額管財事件という名前を使っていない裁判所でも、実態は少額管財事件という裁判所がほとんどです。
まれに通常の管材事件として始まる場合があります。それは、明らかに裁判が必要だとわかっている場合や、調査が複雑そうな場合、大きな会社の破産で債権者がたくさんいる場合など管財人がかかる費用が20万円以上ありそうだと最初から分かっている場合です。
裁判所から、「50万円納めてください」などの金額の指示があります。
少額管財事件となる4つのタイプ
なお、明らかに通常の管財事件になるとわかっている方以外で、次の4つのタイプに該当しない方は、同時廃止の可能性が高くなります。
免責調査型
破産者が財産をほとんど持っていないけれど、ギャンブルなど免責不許可事由にひっかかっているケース。
この場合、免責を出してもいいかどうかを検討するために管財事件になる場合があります。これを「免責調査型」といいます。
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財産返済型
破産者の株や不動産などの財産を現金化すれば、債権者に配当できる、というケース。
免責不許可事由がなくても、保険や不動産、株などの財産をある程度持っているこの場合は、「財産返済型」となります。
過払い請求型
債務超過状態であることは間違いないものの、過払い金が発生している場合、破産申立の前に回収している時間の余裕がない場合や、回収が困難で膠着状態の場合などは、未回収の状態で破産し、回収業務は管財人が行う場合があります。
場合によっては、管財人が訴訟をして過払い金を回収することもあります。これが「過払い請求型」です。
その他(調査が必要な場合)
上の3つにあてはまらなくても、少額管財事件になるケースがあります。
例えば、破産者本人が認知症だったり、事故や病気で意思疎通ができない状態にあったりするなど、なんらかの理由で負債の経緯について全く説明ができないケースなどのように、申立時に内容によくわからない部分が多すぎる場合、管財事件にして本人について調べた方が良いと裁判所が判断することもあります。
第三者予納という選択肢
なお、自分が少額管財事件のどれかに該当している場合、一番気がかりなのは、やはり予納金ですよね。
申立準備をしてくれる弁護士の費用とは別に、管財人費用とするための予納金が必要です。
その場合、官報公告費2万円弱に加えて、最低20万円の予納金を裁判所に納めることになります。
家族や知人などに予納金の援助を頼める方に限りますが、その20万円を払う余力がない、という方に1つの提案があります。
それは、「第三者予納」という方法です。
「第三者予納の報告」を裁判所にしておくと、財産を換価できた場合、あとで、裁判所に納めた予納金を貸してくれた人に戻してくれる可能性があります。
まず、破産申立時に、家族や知人に予納金を用意してもらったことを、裁判所に報告します。
そして、破産事件で財団ができたら援助してくれた人に、予納金を返却してあげてほしい、と前もって頼んでおくのです。それを、「第三者予納」と言います。
ただし、第三者予納は、財団が形成できた場合のみ返却される可能性があり、もし、何も換価できなければ、認められません。
しかし、何もしなければ絶対に返却されない予納金が返ってくる可能性があるのですから、ダメもとでもやっておいて損はない手続です。
不動産を売ったお金を自由財産として自由にできる?
破産管財事件になってしまった場合でも、99万円以下の財産であれば持っていて良いことになっていますが、この「自由財産制度」は手持ちの不動産を売った場合でも利用できるのでしょうか?
ただし、この自由財産を認めてもらうには、自由財産拡張申立という手続を破産申立時及び破産決定から1ヶ月以内に行わなければいけません。
1ヶ月を過ぎた後に出てきた財産などは、上限の99万円に達していなくても管財人に渡さなければいけないお金になってしまいます。
不動産売却には1か月以上かかりますよね。
ですから、不動産を売った代金の中から99万円を自由財産にしたい、というのは基本的には認められていません。
それだけでなく、法定自由財産には対象となる資産の種類が決まっています。
この中に所有不動産は含まれていません。
債権調査手続きの方式には、期日方式と期間方式がある
管財事件になることが決まり、破産手続開始決定が出ると同時に、1回目の債権者集会の日が決まります。
管財事件では、債権者からの債権届に基づいて債権認否が行われます。
まず、管財人が債権届の内容を確認し、全額認めるのか、一部を認めるのか、はたまた認めないのかや、配当時の優先順位などをチェックします。
この手続を債権調査手続といいます。
その締め切りを決める方法には、「期日方式」と「期間方式」という2つの方法があります。
期日方式について
期日方式は、債権者集会と同時に行われる調査期日において管財人が認否を行い、届出債権者または破産者が認否の結果に対して異議を述べる方法です。
1回目の期日で終わらなければ2回目、3回目と延期が可能です。
期間方式について
対して、期間方式は、全国規模の大きな会社が破産した場合など、関係者が多かったり、全国に債権者が散らばっていたりして、一度に集まるのが難しい場合などに、債権調査期間内に提出された債権調査のみを対象に、認否と債権調査を行います。
期間方式では延長がないので、早めに調査が終わり、事件にかかる期間が短縮できるメリットはあるものの、間に合わなかった債権者全員に異議を出さなければいけないので、管財手続としては手間がかかるというデメリットもあります。
しかし、配当見込みが最初から全くないと分かっている事件では、債権調査自体を行わないケースもあります。
それを留保型と言います。
近年では、配当がないと分かっているのに債権調査を行うのは時間もお金もムダなので、債権調査をやらないこの留保型が増えてきています。
管財事件になった場合、不動産は任意売却できる?
さて、管財事件になってしまった場合でも、不動産を任意売却できれば、破産事件が早く終われる可能性があります。
競売よりも、早く、高値で売れる任意売却は、管財人にとっても裁判所にとっても都合が良いと言えます。
ですから、管財事件になったからといって、絶対競売になってしまうわけではありません。
逆に言うと、任意売却でなかなか売れない場合にだけ競売になるのです。
関連記事:任意売却のメリットとデメリット。家のローンが返済できなくなっても競売は避けろ
破産申立の準備と任意売買の準備を同時進行させても問題ない
どのみち破産したら、不動産は手放さなければいけないのですから、破産の準備と並行して不動産業者に任意売却の見積もりを取ってみたりすることも、悪いことではありません。
不動産の査定書を申立時に裁判所に提出すると、実際に売却できるまでの時間が短縮され、破産事件が短期間で終われる可能性が高くなります。
ただし、実際の売却は管財人に任せましょう。
破産申立の直前に不動産を手放すと、免責不許可事由の「廉価処分」や、「偏頗弁済」に該当してしまう可能性があり、破産事件に悪影響を及ぼす可能性があるからです。
管財事件の終わり方
少額管財事件の4種類のどれかにあてはまり、管財事件になったものの、結局財団に配当できるほどのお金が集まらなかった場合、「異時廃止」となります。
「異時」とは「申し立てと同時ではない=異なる時」、「廃止」とは「配当ができませんでした」という意味です。
この「異時廃止決定」が裁判所から出て、管財事件は終了。
あとは、免責不許可事由に問題がないと判断されれば、免責決定が出て全ての破産事件が終了となります。
なお、反対に、不動産を売却してある程度のお金を配当出来た場合、少額管財の場合は多くは簡易配当を経て「終結決定」がなされます。
「終結」とは、「配当をして管財事件が終わりました」という意味です。そして、免責決定が出て破産事件が終了となります。
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まとめ
住宅や不動産を持っていても破産する際にデメリットがあるということはありません。
管財事件になったとしても、住宅の他に複雑な事情がなければ、20万円の予納金で開始できますし、第三者予納という方法もあります。
財産処分が早く終われば事件自体も早く終われる可能性もありますので、管財事件になったとしても、必要以上に恐れたりがっかりする必要はありません。
まずは、自分の状況を弁護士に相談してみることをおすすめします。