自己破産した本人には警備員になどの職業に付けないなどのデメリットがありますが、自分だけでなく家族など周りの人へデメリットが及ばないかが心配です。
そこで、もし自己破産したら妻や夫にどんな影響があるのか、反対に身近な人が自己破産してしまったら、自分にどんな影響があるのか?ということについてまとめています。
自分(夫)が自己破産してしまったら、家族(妻)に何か影響があるのか?っていう視点で、「自己破産」の家族への影響を中心に、素朴な疑問にお答えします。
仲良し夫婦でも財産は別?夫婦別産制について
普段から家族のお財布は一緒という感覚がありますよね。
例えばレストランに夕飯を食べに行ったとして、夫、妻、子供がばらばらに会計をするということはあまり考えられないのではないでしょうか。
夫もしくは妻が生活費のお財布から家族分をまとめて支払うのが一般的です。
そうすると、家族のお財布は一緒で、財産は共有ってことになるのでしょうか?
実は全くそんなことはなく、日本は「夫婦別産制」を採用しています。
財産は夫婦といえども別々に管理されるってことですね。
そのため、夫が「カードローンで借り過ぎて返せなくなった」「クレジットカードで買い物しすぎて、支払えなくなった」って言っても、妻がその負債を被らなくてはいけないってことではありません。
もちろん、妻が過剰な浪費をした場合も、夫が責任を負う必要はありません。
この考え方は自己破産においても同様です。
自己破産すると、手持ちの資産はほとんど手放す必要がありますが、それはあくまで自己破産した人の財産だけ。
夫が自己破産しても、妻の財産を手放す必要はありません。
もちろん、子供や親も残さんを手放さなくて良いのです。
夫の自己破産は、妻や家族名義の財産にも影響するの?という疑問
夫婦として生活や生活費を取り出す財布を共にしていたとしても、家族の個人名義の財産はまったく影響を受けない、というのが原則です。
しかし、夫が自己破産した場合に、妻名義の財産にも影響が及ぶ場合があります。
どういうことかというと、結婚すると夫婦のお財布は一つとして管理されることが多くて、実質的には夫婦で個別に財産を持つのではなく、夫婦で共有の家族財産を持っているって状態になっている場合があります。
例えば、高級車を妻名義にしていたとしても、二人で共同で管理している家計から、自動車ローンを支払っているなら、その高級車は二人で所有しているのと一緒です。
名義だけ妻名義になっていても、実質的に共同で購入しているとみなされるような場合は、要注意なのです。
債権者は、「夫の保有分があるので換金して返済に充ててください」って主張される可能性があります。
- 夫が自己破産しても妻名義の財産は影響を受けない
- なぜなら夫婦別産制だから
- ただし夫婦別産制の対象になる別々の財産というのは基本的に結婚前からの名義財産
- 結婚後は家計が必要になってしまうことが多いため妻名義の財産でも対象外になることもある
- 例としては夫のお金で購入した妻名義の車などは対象外の可能性が高い
- 結婚後は単純に妻名義にしておけば自己破産の影響を受けないというわけではない
以上のことを簡単に整理して覚えてしまいましょう。
夫名義の家や車はどうなるの?家族が使っていても
夫婦別産制と妻名義の財産についての影響はいいとして、では、夫名義の家や車、預金といった財産はどうなるのでしょうか。こちらはもちろん自己破産を申し立てた本人ですから影響を受けます。
自己破産を申し立てた本人名義の財産は生活に必要な最低限の家財やあまり価値のない財産を除き、基本的に処分の対象になります。
前項でお話ししたように、妻名義になっているから絶対に大丈夫というわけではありません。
専業主婦の妻は基本的に収入がないわけですから、車や家、預金が全て妻名義になっていては「これは明らかに旦那さんの財産が混ざっていますよね?」と訝しがられます。
そして自己破産の際に財産を裁判所側が確認すれば簡単にバレてしまいます。
- 自己破産した本人の財産は当然ながら影響を受ける
- 影響を受けるからこそ夫婦別産制を利用して財産隠しをしようと考える人がいるかまずバレる
夫が自分の財産に影響を受けることが嫌で妻名義にすることは財産隠しにあたります。
自己破産をしても「財産隠しをする人は許しません!」と免責を受けられなくなる可能性がありますので気をつけましょう。
かりにいつも妻が使っている車があったとしても、旦那さんが買った車であれば旦那さんの財産と判断されますのでご注意を。
夫婦別産制で他家族の個人名義財産は影響を受けませんが、やはり家族として一緒に暮らしている以上、生活面は影響を受けると考えた方がよさそうです。
ただし、実は高級車でなくて普通の車なら、自己破産しても取り上げられにくいんです。
詳細は下の関連記事をご覧ください。
家族の生活に影響?離婚すれば影響は抑えられるの?
自己破産をしても夫婦別産制をとっているから妻名義の財産は基本的に影響を受けません。
しかし、問題は車や家といった夫名義になっている財産は例え家族が使っていようとも影響を受けてしまうという点です。
また、自己破産は借金の末にするものですから、夫への借金の取り立てをしようとすると、どうしても家族が皆で住んでいる家に通知が届いたり、電話があったりします。
財産は別です。ですから、債権者は妻が夫の借金の連帯保証人や保証人にでもなっていない限り妻への請求はできません。
けれど一緒に生活している以上、夫の財産が差し押さえられたりするので、自己破産は生活に何らかの影響をもたらします。
また、債権者が押し掛けるなど、家族にメンタル的な負担を負わせてしまう場合もあるでしょう。
自己破産で家や車がなくなってしまうと考えると、今後の生活も不安に感じているかもしれません。では、その影響を最小限に抑えるにはどうしたらいいのでしょうか。
真っ先に考えられるのは離婚です。
夫婦別産制であり債権者が妻に借金の請求ができないですし、特に双方の離婚によるメリットはないといわれています。
離婚に意味はあるのかという疑義がありますが、こればかりは夫婦の気持ち、そして自己破産をすることによるお互いの心の問題ですから、片方が離婚を望むのであれば仕方がありません。
どうしても自己破産をすると手続きなどで身辺が騒がしくなりますから「子供への影響も考えて離婚したい」と妻は考えるかもしれません。
もちろん夫婦で話し合い、双方が離婚に同意して離婚届を提出すれば問題なく離婚をすることが可能です。ただし妻から離婚を望まない夫に自己破産が原因で離婚を突きつけられるかといえば、基本的にはできません。
民法で離婚を請求できると定めたケースに自己破産という記載がないからです。自己破産だけでは基本的に離婚事由にはあたりません。
ただし、民法に記載される離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると裁判所が判断すれば離婚が認められる場合があります。
また、自己破産に付属して夫が「お金がない」と言って生活費を入れてくれない、浪費癖が治らない等の別の理由があれば、総合的な事情あるいは別の事情によって離婚が認められることもあります。
財産を守るための離婚はNG
妻名義に財産を移すために離婚するって手段も考えられます。
しかし、これは財産隠しのための偽装離婚として、裁判官や管財人から厳しい視線を受けます。
裁判官や管財人は自己破産案件を数多く扱っている法律のプロフェッショナルなので、偽装離婚は高い確率で見破られます。
破産詐欺罪に問われることもあるので、偽装離婚してからの自己破産は絶対やめてください「関連記事:自己破産前には詐欺破産罪に注意しよう」
妻はクレジットカードを使い続けられる?影響は?
夫が自己破産をしたら、夫自身はクレジットカードを使えなくなりますが、妻や家族はどうでしょうか?
あくまで自己破産をしたのは夫ですから、夫の自己破産後に妻がクレジットカードを新たに作ることもできます。
関連記事:債務整理したらクレジットカードは使えない?ETCカードは工夫次第で対応可
自己破産の家族への影響についてのまとめ
自己破産は本人だけ、そして本人名義の財産にのみ影響があります。ただし家族は自己破産をした本人と一緒に生活しているわけですから、どうしても生活面の影響が出てしまいます。夫婦別産制では生活への影響は防げないのが実情です。
どうしても気になる人は事前にどんな財産が自己破産の対象になるのか、現状で家族にどんな負担がかかるのかを法律家に相談するのがいいですね。
財産は別々のものであっても、生活ではやはり共同体と考え「夫婦別産制だから大丈夫」と気軽に考えない方がいいかもしれないですね。