自己破産したいんだけど、家族も同然のペットが心配で・・・
少子化で家族の人数は減る一方、反対にペットを大切にする人は増えています。
なので自己破産した場合「ペットを取り上げられてしまうんじゃないか?」って心配する人も多いです。
実際は心配いらいないのですが、自己破産のペットへの影響を見ていきましょう。
ペットなら基本的に競売にかけられない
破産事件において、ペットが没収され、競売にかけられるという事態はほとんど考えられません。
購入の際に数十万円もかかり、高価なお金を払って家に迎え入れた血統書付きのペットもいるでしょう。
高価な財産なのだから、破産したら競売にかけられてしまうのでは?と心配している方もいらっしゃるでしょうが、ほとんどの場合、その心配はありません。
近年、ペットは家族の一員だから、などという考え方も広がりつつあるようですが、実際のところ、合理的に考えても、ペットを競売したところで元が取れるか分からないからです。
実際、裁判所の実務面において、ペットを差押え、競売を行うことについてはリスクが高すぎるのです。生きているからです。
例えば、差し押さえたあとの保管について考えてみます。
家財道具や骨董品、自動車のように置いておくだけ、不動産のように逃げていく心配がない、というものなら、時間をかけてじっくり処分していても、価値がゼロになってしまうリスクも低いし、保管に手間もかかりません。
しかし、ペットとなると、管理(えさやりや健康管理など)をすることが大変で、売れるまでの維持費用・手間がかかります。
保管している途中で、残念ながらストレスなどで死んでしまう可能性もあります。
そうなると価値はゼロです。
そんなハイリスクな管理を誰がやるのでしょう?また、その費用はどこ出るのでしょう?
裁判所にそんなヒマな人はいませんし、裁判所はそんなことにお金をかけてくれません。
また、大きく育った成犬や成猫は、購入した時と同じ、もしくはそれ以上、今までかけたお金を取り戻せるような値段で売れる可能性はあるでしょうか?
日本では、ペットショップで扱われる犬や猫は生後数ヶ月の子犬や子猫であることが多く、成長するにつれどんどん売却価値は下がっていきます。
競売にかけて多くの手間をかけて、回収できる金額は微々たるものだとすると、費用対効果は非常に低いと言わざるを得ません。
これらのことから、裁判所がペットを競売にかけることは、まずありません。
20万円を超える高額ペットでも大丈夫?
たとえ購入時に高額であったペットでも、ほとんどの場合、取り上げられることはありません。
確かに、自己破産をする際には裁判所に、20万円を超える高額商品を購入した場合は、申告する必要があります。
しかし、それは、免責を許可して良いかどうかの判断材料とするためであり、申告したペットを没収するためではありません。
ただし、何百万円もする錦鯉や馬など特殊な動物がペットである場合、没収・売却されてしまう可能性はあります。
それは、一般的な犬や猫と違って、錦鯉のような特殊なペットは財産とみなされる可能性が高いからです。売却した金額が高ければ、手間がかかったとしてもお金を回収した方が良い、と判断された場合となります。
ペットローンで買っていた場合は?
車をローンで商品を購入して、破産すると、引き上げられてしまうイメージがあるので、ペットもローンが残っていたら手放さなければいけないのかな?という心配があります「関連記事:住宅ローンを任意整理の対象から外せば家は残せる。車も同じ!」。
これは、はっきりいってケースバイケース。
ペットローンを組んだ時の契約書がどうなっているかによります。
車の場合、ローン残高を払い終えるまでは、所有権はローン会社にあり、ご自身は払い終えるまでは乗っているだけ、という条項がついた契約書のケースがあります。これを「所有権留保」といいます。
この、「所有権留保」の条項がついたローン契約の場合は、購入物がなんであれ、ローンが残っている間は、債務整理を行う旨を通知した段階ですぐに引き上げの連絡がきます。
債務整理の種類が自己破産であれ、任意整理であれ、関係なく引き上げです。もしかしたら、滞納が続いただけで引き上げの連絡が来る可能性もあります。
ですから、ペットローンも、「所有権留保」の条項が契約書にある場合は、有無を言わさず引き上げです。
ただし、ローン会社の判断で、引き上げてもしょうがないもの、すでに引き上げたところで売却価値がないもの、と判断されれば、引き上げはされません。
ですから、実際には、一般的な犬や猫の場合には引き上げられないケースが大半でしょう。
これは、裁判所において判断するのではなく、ローン会社が決めることですので、本当にケースバイケースとしかいいようがありません。
もしペットローンに所有権留保条項が付いていた場合は、任意整理を利用すればペットは手放さずに済むので、弁護士さんに相談してみてください「関連記事:任意整理の基本」。
家畜なら没収
同じ飼育している動物という意味では、家畜もペットと同じですが、家畜の場合は、その取り扱いは異なります。
乳牛や肉牛などの家畜は、そもそもそれらを育てたのち、売却することを想定して育てられており、個人的な愛玩動物ではありません。つまり、家畜は商品なのです。
ですから、破産して家畜を育てて売る事業を辞めた時点で、それら商品は売却して、お金に換える手続に入ります。
そもそも、家畜を所有していて、家畜から得られるお金が充分であれば、破産に至る必要がないわけです。
破産する原因が、畜産業自体の業績不振である場合や、後継者不在などである場合、破産後に家畜たちを所有したままでいても、育てていけるわけがないのですから、冷静に考えると、手放すことが当然とも言えます。
高級犬などのブリーダーだったらどうなる?
犬や猫のブリーダー、高級錦鯉や熱帯魚など、増やして売却することが目的の動物飼育の場合もあります。
その場合も、飼育を生業としているわけですから、買い主は事業者、動物たちは商品と考えられます。いうなればペットショップに準ずる業態と言えます。
事業者の破産では、商品は売却し、現金に換えるのが破産ですから、当然売却処分せざるを得ないというのが、基本的な考え方です。
ただし、ブリーダーの場合は、すでに子犬を産むことがない老犬、老猫も飼育されている場合があります。
これらはかわいそうな言い方ですが、商品としては価値がない動物ということになりますので、持ち主がペットとして飼育することが許されるか、NPOなどの動物愛護団体に引き取られるか、という選択がなされると考えられます。
いずれにしても、破産をした場合は、前述の畜産業と同じく、ブリーダー業は廃業することになりますので、商品としての動物も手放すことになると考えるのが妥当です。
ペットの飼育費に大金をつぎ込んでいた場合、自己破産がやりにくくなる?
個人的な話になりますが、私の知人に、趣味で熱帯魚を飼育していた人がおり、自己破産をしました。
購入時もそれなりに高級な熱帯魚ではありましたが、飼育の維持費が莫大で、家計を圧迫していました。ほぼそれが負債のメインの原因と言っても過言ではないくらいでした。夏も冬も熱帯魚のために温度を一定にしておかねばならないので、エアコンはつけっぱなし。
水槽の空気ポンプも回しっぱなし。
エサも特殊。水替え方法も大がかり。水槽自体もたくさん所有していました。
端から見ると浪費以外の何者でもなく、本人もそれにお金がかかりすぎていることに頭を悩ませていました。
また、熱帯魚は成長しますし、これから先もお金がかかり続けることは火を見るよりも明らかでした。
裁判所が熱帯魚は処分すべきって命令したら「温泉水が流れ込む川に放流しようかな」なんて言っていました(日本の川でも温泉水が流れ込むような川だと水温が高くて、本州で野生のグッピーが繁殖しているケースがよくあります)。
しかし、いざ自己破産の申請をしてみると、裁判所の判断は「手放す必要なし」というものでした。
もちろん免責決定も問題なく出ました。
最初に説明したように、育ちすぎた熱帯魚は売却価値が低いと見なされたことで、売却しても費用対効果が低いと思われたのでしょう。
このように、ペットの飼育費が膨大な出費であり、破産の原因となったとしても、それを理由に、ペットを手放せと言うことはありません。
ただし、ペットを手放さなければ、またその維持費で負債を作ってしまうことが充分に考えられるケースである場合は、浪費に対する反省が無く情状酌量の余地がないとして、免責決定が得られない可能性があります。
維持費がかかりすぎている自覚があるのであれば、親戚や知人などにペットを引き取ってもらい、家計が改善して自分で育てられるようになった時に、また引き取るという方法をとり、裁判所に負債を増やしてしまったことへの反省の意を示すことも必要でしょう。
負債を放置しておく方が、ペットを競売にかけられるリスクは高まる
破産の場合、これまでに説明したように、家畜ではないペットを手放すケースはあまり考えられません。
破産時に、ペットがいることを申告したとしても、家計を圧迫した原因と直接関係がなければ、それにはノータッチのことがほとんどです。
逆に、債務整理を何もせず、負債を滞納したままでいたり、放置している方がペットを競売にかけられるリスクは高まります。
基本的には、競売は、申立人(債権者)から「あの財産を差し押さえてください」と言われることで、行われます。
ですから、負債を払わずに放っておくと、債権者から給料や家財道具を差し押さえられる場合があるのです。
つまり、高級なペットを飼っていることを債権者が知っていた場合は、債権者からペットの差押えのための裁判を起こされる可能性が充分あるのです。
債権者は、少しでもお金を回収したいのはもちろんのこと、お金を返してくれないことを怒っている場合もあります。その場合だと、半ば嫌がらせ的に何の価値もないものでも差押えてきたりすることがあります。いわば執念です。
逆に、破産をしてしまえば、債権者から差押えをすることができなくなります。
ペットであろうと差押え、競売を行ってくる可能性があるのは、裁判所よりむしろ債権者なのです。
債権者からの差押えにおびえているくらいなら、破産してしまった方がペットを手放すリスクは低いのです。
まとめ:自己破産をすることで、ペットを飼うことにペナルティが与えられることはない。
裁判所は、ペナルティとして破産者にペットを手放せと言うことはありません。
裁判所は、破産事件を取り扱う時、破産者が持っている財産に対し、それを売ったらお金になるか?
債権者たちに弁済金が出せるほどの価値があるか?という視点で各財産を見ています。ですから、ペットであろうと、その視点は同じです。
ヤフオクやメルカリなど、簡単に持ち物を売ってお金に返られる時代になりましたが、裁判所を通して財産を処分するためには、法律に定められた手続きに従うためそれなりの手間がかかります。
合理的に裁判所が、処分して得られるお金より、手間がかかる方がムダと判断すれば、その財産を処分しろとは言いません。
ペットの飼い主も弁護士に相談して借金の減額は可能なのです。