連帯保証人には絶対になってはいけないと分かっていても、信頼のおける親友や親族から熱心に頼まれて、仕方なく契約書にサインしてしまうこともあります。
もし、その相手が自己破産してしまった!自己破産することを相談された!というときは、どのような対処方法が最善なのでしょうか。
そこでこの項目では、連帯保証人になっている相手が自己破産した又は自己破産を相談されたときの対処方法について解説していきます。
連帯保証人になっている相手が「自己破産したい」と相談してきた場合
連帯保証人になっている相手から、突然、自己破産したいと相談してきた場合は、どのように対処すればいいのでしょうか。
適切な対象ができれば自分への被害を水際で食い止めることができるかもしれません。
自己破産を思いとどまらせるのは難しい
この場合、相談してきた相手は、自己破産を選択する前に他の債務整理方方法で借金を解決できないか検討したはずです。
その結果、自己破産以外打つ手がないという結論に至ったわけで、最終的な局面にあることは間違いありません。
また、相手は自己破産について様々な情報を収集していることが挙げられますが、一度自己破産の全貌を知ると、債務者は巨額の借金の唯一の逃げ道であると確信することになってしまいます。
契約の際には、絶対に迷惑をかけることはないからと、自信を持って連帯保証人になってもらうことをお願いしてきたにも関わらず、その人に自己破産したいと相談してくるということは、自己破産で借金を一掃して再び人生をやり直そうと強く決意している可能性が高いです。
このため、一度自己破産を選択する決意が固まった相手に、自己破産を思いとどまらせるのは難しいと考えた方がいいでしょう。
任意整理に誘導できれば、連帯保証人の責任は追及されない
自己破産を思いとどまらせるのは難しいとは言っても、このまま自己破産させてしまうと、相手が背負っていた借金が連帯保証人である自分にのしかかってきます。
債務整理を諦めろとまでは言う必要はありません。あまり深く追求したり、厳しい言葉を浴びせたりすると、夜逃げや自殺などの最悪の事態を誘発してしまう可能性もあります。
相手に対し、自己破産から任意整理に誘導できれば、債務整理後の債務に関する連帯保証人の責任から逃れられることになります。
この際に、自分にも家庭や生活があることや相手を信じて連帯保証人になることに応じた旨等を伝えてもあまり効果はありません。
もちろん、相手もそれを理解したうえで仕方なしに相談に来たわけです。
相手を任意整理に誘導するコツは、任意整理の特徴やメリットを伝え、借金を整理するための的確なアドバイスをしてあげることが債務整理方法を変更させるために重要なポイントです。
つまり、自己破産よりも任意整理を利用した方がメリットは大きいと理解させることが重要ということです。
そのためには、自分も任意整理の特徴やメリットを理解しておく必要がありますが、これと同時に、相手が任意整理を選択してくれたときの安心感も得られることになります。
突然、「連帯保証人になった相手が自己破産したから」と取り立てが来た場合
連帯保証人になっている相手が自己破産すると、各債権者から立てが来ることになりますが、この場合の有効な手立ては何なのでしょうか。
保証人になった相手が自己破産すると、どんな形で連絡(通知)が来る?
保証人になっていた相手が自己破産をすると、通常は、相手が破産手続きを申立てた後、裁判所から破産手続開始の要因をクリアして、破産手続開始決定がなされた段階で通知が届きます。
この場合、連帯保証人は将来の求償権を有する破産債権者(知れたる債権者)として、破産手続きの開始決定の通知が裁判所から送られることになります。
相手はというと、自己破産手続きがすべて終了すると、裁判所から免責決定書が送付されることになり、その後のしわ寄せは連帯保証人が負うことになります。
連帯保証人は基本的に逃げられない
連帯保証人は、保証人と違って「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」「分別の利益」がありません。つまり、連帯保証人=債務者です。
連帯保証人になっている相手が自己破産してしまうと、基本的に連帯保証人は債務の返済義務から逃げることはできません。
返せる金額なら一括返済してしまおう
破産者が借金を支払えないことになった場合、残債務の返済責任を負うことになり、連帯保証人になっている借金の債権者から一括請求の通知がくることになります。
もちろん、各債権者と交渉することで分割払いが可能ですが、分割返済するとなると借金の利息だけで数百万円単位になることもあります。
また、連帯保証債務を抱えている場合は、住宅ローンの返済能力で不利になり、家を購入しようと思っても、審査に通らない可能性も出てきます。
もし、借金が返せる金額なら、一括返済してしまった方がいいことは言うまでもありません。
また、主たる債務者に代わって支払った債務には、求償権が付くことになります。
求償権とは、連帯債務者が他人の債務を返済した場合に、債務者に対して求償できる権利(民法442条)のことです。
しかし、債務者は支払い能力がないことがほとんどですので、立て替えた借金の返済を受けることは難しいでしょう。
連帯保証人としてのダメージを最小限に抑えるために
主たる債務者の借金額が大きければ、連帯保証人へのダメージも大きなものになります。
連帯保証人としてのダメージを最小限に抑えるためには、どのような方法が有効なのでしょうか。
離婚すれば財産は残せる?
離婚時は、婚姻中の夫婦の共有財産を清算する財産分与という手続きをとることになります。
この場合に、積極財産(プラスの財産)と消極財産(借金などのマイナスの財産)を評価する必要があります。
このため、連帯保証人になったがためにできた借金は、マイナスの財産としてプラスの財産から差し引かれることになります。
例えば、夫が1,000万円の借金があり、債務が700万円の場合は、1,000万円の財産から700万円の債務を引いた300万円が財産分与の対象となります。
また、夫が債務者であると仮定して、債務が財産よりも多い場合は、手持ちの財産をすべて使って債務を返済したとしても、残るのは債務だけということになりますので、妻は財産分与を受け取れないことになります。
つまり、妻は債務を負担する必要はありませんが、離婚しても財産を残すことはできないということです。
関連記事:夫の自己破産!妻や家族が受ける影響は?
(返済義務が生じた債務を)任意整理、個人再生で減額することは可能?
一括返済できない場合は、任意整理又は個人再生を選択することで借金を減額することができます。
任意整理は、裁判所を介さずに行える手続きとして最も利用者の多い債務整理方法です。
任意整理では、将来的な利息をカットして残りの債務を分割払い、又は減額した債務を一括返済することができます。
個人再生の場合は、借金が1,500万円以上、3,000万円以下の場合は借金を5分の1、借金が3,000万円以上5,000万円以下の場合は10分の1、というふうに債務を大幅に免責できます。
借金の減額のみを重視すれば個人再生の方が圧倒的に有利です。
ただし、どちらの債務整理方法を利用しても、信用情報機関に事故情報が数年間残ることになりますし、それなりのデメリットもあります。
任意整理・個人再生のうち、自分にはどちらの方法が適しているのかを見極めることが重要ですので、まずは債務整理の専門家である弁護士に相談してみることをお勧めします。
まとめ
債権者側はあなたが何も知らないと思って、法律上の義務を超える負担を要求してくる可能性があります。
債権者の言いなりならず、弁護士に相談するなどして主体的に対応しましょう。