個人再生の基礎知識
個人再生は住宅を守りながら、債務を大幅に減らすことができる大変優れた債務整理方法です。
個人再生は、任意整理より債務を大きく削ることができるうえに、自己破産のように住宅などの財産をすべて手放す事態にも陥りません。
そんな優れた債務整理方法である個人再生のメリットとデメリットをまとめることで、基礎知識を整理します。
ここから、詳細に説明していきます。
個人再生のイメージ
債務整理の方法には、個人再生以外にも任意整理や自己破産があります。
・特定調停は裁判所の仲介を頼んで債務者と話し合って債務整理をする方法
・自己破産は借金が重すぎてもうどうにもならなくなって、財産の権利をすべて放棄するから借金もすべてチャラにしてくれっていう破れかぶれの最終手段
上の特定調停と自己破産の間に位置するのが、個人再生のイメージです。
借金の重さでいえば以下のようになります。
任意整理<特定調停<個人再生<自己破産
これが個人再生のイメージです。
個人再生で借金がどれくらい減るのか
任意整理だとどれくらい借金が減るかは話し合いの結果で変わるのですが、個人再生は法律に基づいた手続きであるため債務整理額は法律で決まっています 。
最低弁済額の表
借金の総額 | 個人再生後の借金 |
---|---|
100万円未満 | 全額免除。 |
100万円以上 500万円以下 |
100万円 |
500万円超 1,500万円以下 |
債務額の5分の1 |
1,500円超 3,000万円以下 |
300万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
債務額の10分の1 |
5,000万円超 | 債務整理不可 |
表を作るとこんなイメージになります。
ざっくり借金が80%オフになるイメージなので、かなり楽になるのがわかると思います。
この個人再生によって減った借金に対して、利息を付けずに返済していけばよいので、非常に楽になるのがわかると思います。
ただし、上記の表は個人再生のうち小規模個人再生を利用した場合の債務削減額です。
給与所得者等再生を利用した場合は、可処分所得の2年分は最低でも返済しなければなりません。
この違いについては、以下のリンク先に詳しくまとめています。
任意整理が出来ない人に向けた個人再生
任意整理は、債権者と債務者が話し合うことによって借金を減らして、残りの債務の完済を目指すという穏便な制度です。
任意整理がうまく行けば家や車を手元に残したまま債務整理できるので、借金返済の強力な武器になります。
しかし、借金の額によっては任意整理では解決できません。
また、債権者と話し合うといっても、合意できなければ任意整理は成功しません。
そうした任意整理が出来ない人が、それでも借金を減額してもらいたいって時に利用するのが「個人再生」です。
任意整理より大幅に債務を減らせる
任意整理は少額の債務整理に優れた手法ですが、大きな借金の整理には向きません。
その点で、個人再生は5,000万円以下の借金なら利用可能で、借金の額を5分の1から10分の1にまで減少させます。
個人再生なら、重い借金に苦しむ人でも、生活の再建が可能になるのです。
個人再生がなぜ強力か?
なぜ個人再生は強力なのでしょうか?
それは個人再生とは、裁判所が債権者と債務者の間に入るだけでなく、法律に基づいて債務を減額してくれるからです。
個人再生は当事者同士で話し合う任意整理では解決できない問題を、裁判所の力を利用することで解決する債務整理の方法と言えます。
そして、個人再生は、任意整理と同様に借金額を減額してもらえるだけでなく、住宅という最も大事な資産を手放さなくて済むのです。借金は減らしたい、でも安い値段で住宅を取り上げられるのは御免だって人に向いている方法です。
住宅を手放さなくて済むという大きなメリット
個人再生は住宅を手元に残したまま、借金を大幅に減額できる制度です。
この住宅を残せるのは自己破産と異なる個人再生の最も大きなメリットです。
なぜ、住宅を手放さずに済むのか?
なぜ個人再生をしても住宅を手元に残せるでしょうか?
個人再生で住宅が守れる理由というのは、法律で「住宅ローン特則(住宅資金貸付債権に関する特則)」が定められているからです。
住宅ローン特則とは、住宅ローンの返済に猶予が与えてもらえる制度です。
住宅ローンが当初銀行からの返済条件通りに返済できなくなった場合に、住宅ローンに関して期限猶予を得ることができます。
これが個人再生の大きなメリットです。
手続きとしては、個人再生計画案をまとめる際に住宅資金特別条項を含めて申立てることで住宅ローンの特則が利用できます。
個人再生は、個人再生計画案は裁判所に認可される必要がありますが、裁判所が認可すれば住宅ローンに関して返済を先延ばしなどの猶予策が与えてもらえます。
この個人再生の仕組みが強力なのは、裁判所が決定することのなので、銀行などの債権者が拒否することが出来ないということです。
もし、破れかぶれになって自己破産をしてしまったら、住宅は債権者に取り上げられます。もしチャンスがあるなら、個人再生を狙いましょう。
ただし、住宅が残るということは、住宅関連の借金は、支払いタイミングは猶予されるものの支払い義務自体は残ります。
住宅を残したまま個人再生する条件
個人再生で住宅を残すにはどんな住宅でも良いというわけではありません。
以下の条件を満たす必要があります。
債務者の住宅であること
これは当然ですよね。自分の住宅でなくてはいけません。
いけないというか、他人名義ならそもそも債務者が個人再生を行ったとしても取り上げられるわけがありません。仮に自己破産しても影響なしです。
個人用(住居用)の建物であること
主として住居として使っている建物でなくてはいけません。
債務者の生活を守るためにある制度などで、投資目的だったり、ビジネス目的だったりする建物まで守っては制度の趣旨に反してしまいます。
住居として使っている条件(個人再生が使える)物件は以下の条件を満たしたものです。
- 債務者の居住用の建物であること
- 居住用のスペースが床面積の2分の1以上であること
もし、建物が2つ以上ある場合は、債務者がメインで使ってる住宅しか残すことはできません。
住宅ローンであること
実はローンの種類によっては住宅を残せない場合があります。
家を買うためのローンなら個人再生で家は残せるのですが、家とは無関係の借金を個人再生する場合は家が没収される場合があります。
別の言い方をすると、借金が住宅の建築などによってできた住宅資金貸付債権であることが必要、なんて表現できます。
この辺は分かりにくいので、弁護士さんに相談すべきですが、一般的な住宅ローンを借りて建てた物件なら大丈夫です。
住宅に住宅ローン以外の抵当権が存在しないこと
住宅に住宅ローンの抵当権がついていることはごく当たり前のことです。
しかし、住宅ローン以外の抵当権が付いてしまっているとまずいことになります。
その場合、住宅を担保に、住宅以外に使うための借金を作ってしまうことになるので、「住宅ローン特則(住宅資金貸付債権に関する特則)」を用いて住宅を残すことはできなくなります。
代位弁済がされた場合は6か月以上経過していないこと
借金返済が苦しい場合、住宅ローンの返済が滞ってしまっている場合が多くあります。
そして住宅ローンを延滞すると、保証会社が代わりに支払いを行います(代位弁済)。
この保証会社の支払い(代位弁済)から6か月を経過すると、住宅資金特別条項によって住宅を残すことが出来なくなります。
本来は、保証会社がローンの支払いを肩代わりした段階で法律関係上は住宅ローンで債務不履行を起こしてしまっているわけですが、代位弁済から6か月以内ならば特例として、「住宅ローン特則)」が利用できるというイメージです。
6か月前までは、代位弁済前の住宅ローンの状態に時間を戻して法律関係を再構築できるわけです。
住宅を残すことは自己破産に比べて、債権者にもメリットがある
個人再生は法律による債務整理の仕組みなのですが、同時にローンの貸し手にも配慮を行っています。
それは個人再生をした場合、自己破産したときよりも、債権者への返済額が多くなる掲載方法をとっています(清算価値保障の原則)。
そのため債権者にとっても自己破産よりもマシな制度いえます。だから、住宅ローンを個人再生の対象から除外できるわけですね。
個人再生と滞納家賃
住宅を自分で持っていなくて、賃貸していた場合に気になるのは家賃の滞納がある場合です。
借金があって個人再生を検討しているようなときは、家賃を滞納してしまっている可能性があります。
個人再生の手続き中であっても、住んでいるアパートなどの家賃は支払い続けることになります(水道光熱費なども同様です)。
家賃をきちんと支払っている限り、家主側に「家から出て行ってください」と主張してくることはありません。
ただし、個人再生手続開始の時点ですでに滞納家賃がある場合には注意が必要です。
また、滞納している家賃も個人再生によって減額される債務に含まれますので、滞納家賃の一部が免除されてしまったことを理由に家主側が立ち退きを要求してくる可能性は高くなります。
どうしても今の家に住み続けなければならないという事情がある場合には、親戚に一時的に立て替えてもらうなどの方法を考える必要があります。
なぜ、親類に建て替えてもらうかと言えば、自分で他の債権者よりも優先して、滞納家賃の支払いを行うことは、一部の債務を優先して返済する「偏頗返済(へんぱへんさい)」とみなされるからです。
滞納家賃のみを優先して返済するのは、すべての債権者を平等に扱うために(偏頗返済の禁止)禁じられているわけですね。
特定調停と比べた個人再生のメリット
他の借金と一緒に整理
特定調停でも、個人再生のメリットとして挙げた、裁判所が債務者と債権者を仲介してくれることは可能です。
そして、話し合いがうまくいけば、自宅を残すことが出来ます。
しかし、特定調停では住宅ローン以外のその他の借金を支払うことが出来なければいけません。特定調停や任意整理では、住宅を残すには、ほかの借金は何とか返済する必要があるのです。
これらの点が、ほかの借金と一緒に債務整理を裁判所が手伝ってくれる個人再生は、大きなメリットがあると言えます。
法的根拠に基づく個人再生の強力さ
特定調停は裁判所が間に入ってくれると言っても、債権者と債務者の話し合いを手伝ってくれるだけです。
それに対して、個人再生は法的な根拠に基づいた借金減額です。
そのため、借金減額に応じてくれない強硬な債権者に対しても効果があります。
この法律に基づいた整理、という部分が個人再生の強力さに繋がっています。
自己破産と比べた個人再生のメリット
自己破産と個人再生は、法律の根拠に基づいた法的な債務整理という意味で似ています。
個人再生なら住宅など資産が手元に残せる
しかし、自己破産はすべての債務をチャラにするという、ある意味究極の債務整理方法です。まさしく最後の手段と言ってよいでしょう。
自己破産は強力なだけあって副作用も強いです。その副作用とは、時価20万円以上の財産は、原則として売却されて、債権者へ分配されてしまいます。
すべて借金を放棄させるなら、資産もすべて差し出しなさいってことですね。
そのため、住宅など生活に大きな影響を与える住宅も差し出さなくてはならないのです。
しかし、個人再生であれば、住宅を残しながら、借金総額を減らすことができるのです。これは大きなメリットでしょう。
借金の原因が問われない
自己破産の場合は、免責不許可事由がという借金の免責が認められない理由が列挙されており、これに該当する浪費やギャンブルなどが借金の主な原因である場合には事故破産が認められません。
一方で個人再生は、借金の理由がギャンブルだからと言って、借金が減額できなくなるわけではありません。
そのため、借金の理由が浪費(FXなどの投資も含む)や競馬やパチンコなどのギャンブルの場合は、個人再生を積極的に検討しましょう。
給料の差し押さえなど強制執行を停止できる
個人再生を行うと給料や財産の差し押さえなど強制執行手続きが一旦停止します。
借金が膨らんで個人再生の利用を検討している人は、給料や家、車、宝石などの財産が差し押さえられる危険がある人もいると思います。
しかし、個人再生の手続きを弁護士などが開始した場合、給料・財産の差し押さえなど強制執行ができなくなります。
給料が差し押さえられたら、会社にも知られてしまうし、そもそも生活に大きな影響が出るので、この強制執行の停止という効果は非常に大切です。
個人再生のデメリット
個人再生にはさまざまなメリットがあることが分かりました。
一方で、個人再生には債務整理につきもののデメリットもあります。
ブラックリストに入る
債務整理はどれもそうなのですが、個人再生を行うといわいるブラックリストに載ってしまいます。個人再生手続きが開始されると、信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリスト入り)ことで、新たな借り入れが当面できなくなります。
官報に名前が載る
これは自己破産と一緒なのですが、個人再生を行うと官報に名前が載ってしまいます。職場によっては官報をチェックしているので、借金で首が回らなくなったことが同僚や人事部にバレる可能性があります。
5,000万円以上の債務整理は不可能
個人再生による債務整理は、借金の総額が5,000万円以下でなくてはできません。
これ以上なら自己破産しろってことですね。
個人再生とは、借金が5,000万円以下の場合に限って、(会社などを倒産から救うための)民事再生を個人でも利用しやすくしたものです。
借金が5,000万円を超えていた場合、正式の民事再生手続きで債務整理をすることは可能ですが、多額の費用と時間が掛かります。
個人の場合は、民事再生の利用は現実的ではく、個人再生が利用できなければ自己破産を使った方が良いでしょう。
ただし、住宅ローンは別カウント(別除権)なので、住宅ローンを除く借金が5,000万円というのが、個人再生できるラインになります。
安定した収入が必要
個人再生はあくまで債務を整理することで個人の復活を促す制度なので、立ち直る根拠となる安定した収入が必要になってきます。
個人再生を認めたのに、残りの借金も返せませんでしたでは、最初から自己破産しろ、という話になってしまいます。
債権者間の平等さも保てないので、安定した収入がある人のに個人再生を認めようという法律の作りになっているのです。ただし、まったくの無収入でなければ認められることもあるので、詳しくは弁護士さんに相談してください。
年金とかでも安定した収入と認められますよ。
前回の個人再生から7年の経過が必要
個人再生はあくまで今後の借金は返すという前提なので、連発することはできません。
個人再生は給与所得者が行う給与所得者等再生と自営業者や農家が行う小規模個人再生にわかれますが、給与所得者等再生の場合、前回の個人再生から7年の期間経過が必要です。
一部債務は個人再生の対象外
税金は一般優先債権などと呼ばれ個人再生の対象になりません。
また、マンションの管理費や光熱費などの共益債権も同様に個人再生で返済免除してもらうことはできません。
また、損害賠償を行う義務(損害賠償請求権)がある場合や、離婚に伴う慰謝料や養育費の支払いは非免責債権といわれ、個人再生の対象になりません。
総じて、公序良俗や常識に反するような債務は、対象にならないというイメージになっています。
税金は対象外
個人再生で減額してもらえる債務には、税金や社会保険料の滞納分は含まれません。
個人再生を行った後にもこれらの債務(未払いの税金や社会保険料)は支払い義務が手続前のままの金額で支払い義務が残ることになります。
近年では社会保険料の支払い逃れなどに対しては、預金差し押さえなどの処置が取られるケースも珍しくないので注意が必要です。
手続きの煩雑さ
債務整理は手続きの簡単な任意整理などでも基本的に弁護士に依頼した方が成功するものですが、個人再生はそもそも難しすぎて絶対に弁護士が必要なレベル。
法的・書類的に相当複雑なので、お金がないからと言って個人で頑張っても時間の無駄になりやすいです。
是非弁護士さんに相談しましょう。
借金減額におすすめの相談先は、下でご紹介してます。