個人再生の利用には、借金を負っている債務者が、将来的に収入が得られる状況にあることが必要です。
そのため、収入が不安定、でもそこそこ継続的に収入があるという人は、個人再生が利用可能かどうか、非常に迷うと思います。
個人再生は、減額した借金を3か月に一度の割合で返済しなくてはならないので、3か月に1回程度の収入は継続的に発生する見込みがあることが必要です。
個人再生できるか悩ましい人
- 個人事業者(含む、農家、漁師)
- アルバイト、パート
- 期間工、派遣労働者
- 主婦
- 失業中の方
- 年金受給者
- 生活保護受給者
この記事では、収入が一定あるものの、安定的とまで言えない人が、個人再生を利用できるか考えてみたいと思います。
Contents
個人再生の二つの形
個人再生には、給与所得者等再生と小規模個人再生の2種類ありますが、適用条件がそれぞれ異なります。
両者の違いについて詳しく知りたい人は、下のリンクもご参照ください。
それぞれの利用条件は
給与所得者等再生:給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その変動幅が小さい。
小規模個人再生:将来において、継続的に又は反復して収入を得る見込みがある。
というのが、条件になります。
給与所得者等再生の方が、「収入の変動幅が小さい」ってことまで求められているので、より厳しい条件が課されていることがわかると思います。
反対に小規模個人再生の方が、「反復して収入が得られる見込み」と比較的緩い基準になっています。
利用しやすさレベルは、
小規模個人再生>給与所得者等再生
となっています。
これから個人再生を利用可能かどうか見ていくにあたって、以下の3パターンに分類されることになります。
この辺を意識しながら、見ていきましょう。
個人事業主、農家の場合
個人事業主の方、農家の方は、収入自体はサラリーマンほど安定的ではありません。
そのため、給与所得者等再生は無理でしょう。
一方で、3か月に1度程度の収入なら得る見込みが高いです。事業をしていれば、3か月に一度程度くらいは入金がありますからね(よほどキャッシュフローのリードタイムが長いビジネスだと例外があるかも知れませんが、通常は大丈夫です)。
仮に農家のように収穫期に収入が集中している場合でも、その収入を留保(貯めておく)しておき、3か月に1度の割合で、借金の返済に回せるようなら個人再生は可能なのです。
そのため、判断としては以下のようになると考えられます。
アルバイト、パートの場合
アルバイトやパートタイマーで働いている方と、正社員の違いは雇用の安定性と継続性ですが、果たして個人再生は利用可能でしょうか?
同じバイト先で長く働いている場合
もしあなたが、アルバイトやパートであっても、そこそこ長い期間継続して働いているようなら、個人再生は可能です。
長期間同じ場所で働いている人は、今後も継続して働くことが出来ると考えられますので、雇用の継続性に関しては正社員とあまり変わりません。
そのため、小規模個人再生だけでなく、給与所得者等再生も利用できる可能性が高いです。
短期間のバイト、パートを繰り返している場合
では短期間でパート先、バイト先を変えているケースはどうでしょうか?
この場合、次のバイトが見つかるまで収入が得られないので、少なくとも正社員レベルの継続性はありません。
また体調を崩したとき、普通のバイトは有給などないので、直ちに収入がなくなるので安定性に欠けます。
しかし、バイト先、勤務先が変わったとしても断続的に仕事を続けている場合、定期的な借金の返済は可能と考えられ、個人再生の利用適格を欠くとまでは言えないでしょう。ただし、さすがに給与所得者等再生は難しいです。そのため、判断は以下のようになるでしょう。
ただし、バイトをしてさえいれば良いわけではなくて、ある程度、借金の弁済に回せる程度の収入があることが前提です。
収入が少なすぎては、再生計画が完遂できない、すなわち個人再生を認めてもやり遂げることが出来ない人、として個人再生が成立しなくなります。
期間工、派遣社員の場合
期間工
アルバイトなどは雇用契約の期間に定めがないため長期雇用の可能性がありますが、あらかじめ雇用期間が決まっている「期間工」や「派遣社員」の方は、個人再生が利用できるのでしょうか?
普通に考えると、契約期間終了後には収入が途絶えることが見えているので個人再生の利用は難しい(利用適格性がない)と言えそうですが、必ずしも無理とは言えないようです。
ポイントは、雇用契約後の再就職の見通しが明るいことや失業中にも一定程度返済を継続できることを証明できれば、小規模個人再生の利用は可能かもしれません。
派遣社員(派遣労働者)
派遣社員は期間工と性質が近いですが、派遣期間が延びる可能性がある、正社員になれる可能性がある、派遣契約終了後も次の派遣先が決まりやすい、などの特徴があり、一般的に期間工より収入が安定しているとみられます。
歩合給
固定給で働く普通のサラリーマンと違い、歩合給で働く人は収入が不安定です。
しかし、一般企業のセールスのように、基本給+歩合給、という形態なら、安定的な基本給に歩合給が乗っているだけって解釈できるので、サラリーマンと同じあつかいです。
そのため
ただし、歩合給部分が極端に少ないと、給与所得者等再生は無理になるケースもあり得ます。
100%歩合給の人の場合は、個人事業主に近い扱いになります。
最近の収入状況を見ながら、ある程度継続的に収入が得られるとみなされれば、小規模個人再生で対応することになります。
専業主婦
専業主婦で全く収入がないという人は、個人再生は利用できません。
しかし、アルバイトやパートを始める予定があれば、個人再生は利用できる可能性があります。
失業中の人
失業中の人は、収入がないわけですから難しそうです。
失業保険という収入源はあるわけですが、失業保険を貰える期間は90日から330日(年齢や失業保険加入年数によって異なる)と上限が決まっていますので、継続的に借金の返済ができません。
そのため、個人再生は利用できません。
が、再就職の見込み次第では個人再生は利用できます。
安定している大企業や公務員に内定しているのに、現在失業者だからって個人再生を利用できないっていうのは合理的ではないですよね。
再就職後には、返済できる生活になるわけですから。
そのため、再就職見込みがあるひとは、
年金受給者
日本の年金は結構手厚いので、年金受給者は定期的な収入がある人、とみなされます。
そのため、
生活保護者
生活保護者は、年金と同じように定期的に収入があるように見えるかも知れません。
しかし、生活保護の制度というのは、最低限度の生活を保障するための制度であり、(少なくとも建前上は)貯金すらも出来ない金額が支給される、ということになっています。
すなわち借金を返す余裕はないってことですね。
まとめ
収入が不安定(とみられる)人が、個人再生が適用可能かどうか、についてみてきました。
給与所得者等再生は難しいケースが多いですが、小規模個人再生には全くの無収入や生活保護中の方でなければ、結構可能性があることがわかると思います。
そこまで安定してなくても、ほどほどに収入が得られている、または得られる見込みがある人は、弁護士さんに相談してみても良いでしょう。