任意整理には法定の返済期間が決まっているのでしょうか?
任意整理は、自己破産などと違って裁判所を通さない手続きです。
そのため、任意整理の法的な返済期間は決まっていません。
債務者が置かれている状況に応じて、代理人が債権者の同意を得ながら返済期間を調整し、和解を目指すことになります。
毎月の返済額の決まり方は?
任意整理をしたいと思っているあなた(債務者)にとって気になるのは、「毎月の返済額をどうやって決めるのか?」という点でしょう。
毎月の返済額を算出する際に重要なことは、確実に払える額にとどめるということです。債務者によっては、「お金に余裕がある月は7万円返せるけれども、余裕がない月は5万円しか払えない」という人がいたりします。
この場合、任意整理後の返済額は7万円ではなく、5万円にしておくべきです。
任意整理後の分割払いを2回以上滞納してしまうと、債権者から一括全額返済請求を受けることになります「関連記事:任意整理後の返済!一括返済は出来る?遅れたら?」。
ですので、毎月の返済額は「収入が少なかったり、支出が多い月でも返せる額」にとどめておくことが大切です。
無理しないで返済できる金額にとどめる
この点について、債務者は弁護士などの代理人ときちんと話し合う必要があります。
弁護士は、毎月の返済可能額が妥当であるかを確認し、債権者側に提示する減額後の借金元本とのバランスを勘案した上で、任意整理が可能かどうかを見極めることになります。
任意整理の返済期間は3年(36カ月)が目安ですので、毎月5万円返済可能な債務者であれば、合計180万円(36×5)の返済を目指すことになります。
毎月3万円しか払えなければ、返済期間を5年(60カ月)にするなどして、180万円(60万円×3)を返済する計画などを検討します。
任意整理を検討する債務者は、複数の金融機関などから借金をしていることがほとんどです。
債務者が毎月返済可能な額が5万円の場合、A社2万円、B社1万円、C社8千円、D社1万2千円というように各社への返済割り当て額を決めて、債権者への提示案を決定します。
弁護士(債務者の代理人)は、債権者に対して借金の減額内容を提示して、将来利息のカットや長期分割払いを要請することになります。
債権者である金融機関などによって、長期間の分割払いに応じてくれるところもあれば、まったく交渉してくれないところなど様々です。
この部分は、代理人の交渉技術によります。
能力の高い弁護士や司法書士などに依頼をすることで、債権者から有利な条件を引き出してくれる可能性が高くなりますので、債務者は代理人を慎重に選ぶ必要があります。
債務者からの提案を債権者が受け入れれば、任意整理の和解契約書を作成し、その中で、減額された借金額や分割払いの方法、期間などの詳細を記載します。
和解契約は、書面ではなく口頭で行うこともできます。ただし、任意整理後に問題が起こった場合、紛争が起こる可能性がありますので、通常は債務者と債権者の間で和解契約書を締結します。
平均の返済期間は?
任意整理を行う場合は、返済開始後3年で完済を目指す形にすることが基本になります。
仮に、減額後の債務が180万円になったとしたら、3年間で分割返済をすることになりますので、36カ月の間、毎月5万円を返していきます。
任意整理の返済期間は3年であることが多く、36カ月の分割払いで残りの借金を返していくことが原則になっているのは、個人再生の返済期間が通常3年になっていることが影響しています。
民事再生法に基づいて、借金の減額を裁判所に申し立て、3年で債務整理を目指すのが個人再生です。
返済期間が3年以上になると、債務者の仕事や家庭環境が変化する可能性があり、それが支払いにも影響を及ぼしかねないという背景から、個人再生の返済期間は3年が基本になっています。
個人再生が基準にしている3年返済を、任意整理でも取り入れていることになります。3年であれば債務者の経済状況が大きく変わることもなく、問題なく返済が可能な期間であると判断されているわけです。
3年で返済するのが基本
ただし、3年で任意整理を目指すのはあくまで目安ですので、債務者が長期の返済期間を提示し債権者が同意すれば、3年以上の時間をかけて借金を返していくことも可能になります。
月々の返済可能額×12(カ月)×3(年)
が任意整理できる借金額の目安ってなりますね。ただし、以下に3年以上の長期分割も可能なこともあるので、これ以上借金があってもあきらめなくて大丈夫です
一括返済にメリットある
反対に任意整理後の借金を一括返済するメリットはあるのでしょうか?
実は一括返済をするとこちらが提案すると、借金の元本減額をより大きくしてくれる金融機関もあります。
もし一括返済する余裕があれば積極的に検討しましょう。
過去にグレーゾーン金利で借金をしたことがある債務者は、それを代理人に伝え、債務の取引履歴を精査し、過払い金の有無を確認することになります。
グレーゾーン金利があれば、元本が大幅に減るってことですね。
過払い金と任意整理の関係については、「過払い金が無い場合は任意整理より個人再生の方が良いの?シミュレーションで解説」で確認してください。
最長だとどれくらいの返済期間がある?
任意整理は、裁判所を通さない債務整理方法ですので、債務者からの提示を債権者が了承をすれば、どれだけ長期の返済期間にしても問題ありません。ですので、任意整理については、最長の返済期間というものが定められていないことになります。
返済期間を3年で設定することが多い任意整理ですが、5年返済で債権者が合意してくれる場合もあります。しかし、5年を超える返済期間になると、応じてくれない場合がほとんです。
7年という最長パターンもある
ただ、7年返済が認められた任意整理のケースもあります。
返済期間が長くなればなるほど、毎月の支払い額が小さくなりますので、債務者は余裕をもって返済することが可能です。
ただし、7年返済という異例の長期支払いを提案し、債権者に承諾してもらうためには、債務者がその間、延滞することなくきちんと毎月返済を行えるという理由を説明する必要が出てきます。
例えば、債務者がかなり前からある信販会社のカードを使っており、利息を含めて延滞することなく毎月の支払いをしていることなどは、7年返済の提案について、債権者の説得材料になるかもしれません。
上記は、債権者が信販会社で、債務者が長期間、その会社の顧客でカードを使っており、債権者の会社に金利分を含め、大きな収益を過去にもたらしていたケースなどが考えられます。
ただ、任意整理は債務者から借金の減額を債権者に求める手続きになりますので、7年返済のような長期分割返済提案が認められるのは、例外的であると考える方が良いでしょう。任意整理には裁判所などの司法機関が介入しませんので、債権者が認めてくれない場合は債務者の提案が通らないことになります。
債権者の業態も影響する
また、債権者がどのような業態であるかによって、長期返済提案への対応は変わってくる傾向にあります。
携帯電話やスマートフォン、wifiルーターなどを一括ではなく分割払いで購入し、完済する前に任意整理を行った場合、これらの会社に3年以上の返済提案を行っても通常認めてくれません。
一方、クレジットカード会社や信販会社は、長期の返済交渉に応じてくれる可能性があります。
「上限は5年返済、最長60カ月まで」という決まりがある会社もあるようですが、債務者からの5年以上の返済提案について交渉の余地があると言えます。
消費者金融会社の場合、大手か中小かの違いが大きく、その会社の経営状況によって対応が分かれます。
ここ数年は、過払い金の返還請求に追われていた消費者金融会社が多かったことから、任意整理で長期の分割払いを承諾してくれるところは少なくなっています。
特に、中小の消費者金融会社は、大手よりも経営に苦しんでいるところが多く、任意整理で長期分割を債務者側から提案しても、応じてくれないことが多いようです。
なお、特定の債権者を任意整理の対象から除外することが可能です。ですので、携帯電話会社を対象から外して、信販会社や消費者金融会社を任意整理の対象とすることなどができます。
このような方法により、分割払いが残っているスマートフォンなどを使い続けることができますので、代理人と相談の上で、任意整理の対象とする債権者を決定するようにしましょう。