お金を使わないで任意整理したいっていう人が、考えることとして「自分で任意整理できないかな?」ってことだと思います。
しかし、任意整理は、債務者から債権者に借金の利息カットや分割払いを依頼する債務整理ですが、弁護士などに依頼するケースがほとんどです。
弁護士を通さないことも可能ですが、知識の乏しい債務者が任意整理を自分で行うことは様々なリスクを伴います。今回は、任意整理を自分で行うことのメリットやデメリットなどについて説明します。
任意整理は弁護士を使わなくてもできるの?
法律上、自分で任意整理しても良いか?という意味なら、弁護士などの専門家に依頼せず、自分で任意整理をすることは可能です。
自己破産などと違って、任意整理の場合は裁判所とのやり取りがないため、厳密な意味での法的手続きではありません。
公的機関を介さない債務整理手法であることから、債務者に法律知識や経験があって、手順を遵守してさえいれば、自分で任意整理を進めることが可能なのです。
ただし、任意整理手続きを自分で進め、利息カットや分割払いなどを金融機関に求めたとしても、話し合いに応じてくれないケースがあります。
任意整理は、裁判所を通さない任意の話し合いであり、金融機関側が債務者の要請に応じる義務はなく、弁護士を使わずに自分で債権者と交渉するのは大変困難なのです。
なお、自分で任意整理を始めてから、限界を感じるなどして途中で弁護士などに依頼することも可能です。弁護士などにサポートを依頼するタイミングについては、特に決まっておらず、債務者の判断に委ねられています。
任意整理の費用は、下の記事で詳しくまとめていますが、そこまで高くないので弁護士さんに依頼するのが安心です。
自分でやるメリットは節約
任意整理を自分でやる最大のメリットは、弁護士・司法書士に支払う費用が発生しないことです。
弁護士への支払いは、相談料、着手金、報酬金、減額報酬とあり、数万円から数十万円程度の支払いが必要になります。
借金が減るメリットがあるとはいえ、小さくない金額です。
しかし、そんなにうまく行くのでしょうか?
自分でやる任意整理は、デメリットがはるかに大きい
任意整理を自分でやる場合、上記の弁護士費用を節約できるというメリットがある反面、それをはるかに上回るデメリットがあります。弁護士に頼らず、専門知識のない債務者が自分で債務整理を行う際のデメリットを見ていきましょう。
自分でやったら、金融機関は相手にしてくれる?
任意整理を行う場合、複数の金融機関から借金をしている債務者がほとんどです。自分で任意整理をやるとなると、それらの債権者1社ずつに連絡をし、話し合いの場を設けてもらうよう依頼することになります。
裁判所を通さない任意整理では、債権者との交渉が最重要であり、法律の素人である債務者が金融機関を相手に有利な条件を引き出すのはとても難しいのです。
債務者自身で債権者に連絡し、任意整理の話し合いを要求したとしても、最初は相手にしてくれない金融機関がほとんどです。
任意整理は、今のままでは借金を返すことが難しい債務者が、利息カットや分割払いなどによって、借金の減額を債権者に依頼する手続きです。
交渉相手となる金融機関は、弁護士でない債務者と話し合うためのテーブルに簡単についてくれません。
専門家である弁護士を代理人にすれば、金融機関側の反応は全く異なり、スムーズに交渉に応じてくれます。自分で任意整理を行う場合、債権者と面談の場を持つまでに多大な時間と労力が必要になり、非効率な作業を続けなければなりません。
弁護士さんや司法書士さんの名前があった方が、話は早いです
取引記録の開示に応じてくれる?
任意整理は、借金の減額を債権者に依頼する手続きになりますので、債務の状況を詳しく示した取引記録を、金融機関から開示してもらわなければなりません。
弁護士ではない債務者自身からの依頼であっても、金融機関は取引記録を開示する義務があります。
債務者は、金融機関に電話などで直接連絡し、取引記録を開示してもらうことになります。取引記録の開示方法は、会社ごとに違います。電話をするだけで取引記録を郵送してくれるところもあれば、開示請求書の提出を求めてくる場合もあります。
取引記録の開示には一応応じてくれる可能性がたかいですが、開示請求書の提出などを求めることで引き延ばし作戦をとってくる恐れがあるのです。
取引記録の開示までに必要な時間も、金融機関によってまちまちです。特に弁護士がついていないなら、なめられて時間をかけられる恐れが高いですね。
個人は日々の生活があるので、時間がかかれば、諦めたり忘れるかも知れないって消費者金融が考える可能性は高いです。
持久戦で解決しようと思っちゃいますよね、金融機関としては
引き直し計算って自分でできるの?
グレーゾーン金利で借金をしたことがある債務者は、利息制限法に基づく引き直し計算によって過払い金を算出します。この引き直し計算は非常に複雑で、債務者が自分で行うのは大変厄介な作業です。
弁護士が代理人になっている場合でも、金融機関と何度もやり取りをしながら引き直し計算を行い、過払い金の有無を確認します。
出資法や利息制限法などの関連法に詳しくない債務者が、専門家のアドバイスなしに自分で引き直し計算をするのは困難でしょう。
よほど計算に強い人で、しかも利息制限法・制度をよく知っている人でないと自分ではなかなか計算できません
手間はどれくらいかかる?
自分で任意整理を行うと、金融機関に借金の取引記録を開示してもらい、複雑極まりない引き直し計算を行い、なかなか相手にしてくれない債権者を交渉のテーブルにつかせるために説得を繰り返すなどの大変な手間がかかります。
また、金融機関との借金減額交渉は困難を極め、利息カットや分割払いなどの提示をしたとしても、弁護士に依頼した場合と比べて、不利な状況に置かれる可能性が高いでしょう。
金融機関は様々な債務整理を経験しており、膨大な知見を蓄えています。
自分で任意整理をやる債務者は、老獪な金融機関とのやり取りに手間取り、四苦八苦することになります。
仮に、金融機関と任意整理の合意に近づいたとしても、和解契約書などを債務者が自分で作成することになります。
必要書類のやり取りについても、債務者がそれぞれの金融機関と繰り返し交渉しなければならなくなります。
任意整理だけに集中できる債務者は少数で、仕事や家事など他にやることがあるケースがほとんどでしょう。
そのような中で、弁護士に頼ることなく、債務者自身が手間をかけながら、任意整理を進めていくのは非常に難しいと言わざるをえません。
受任通知が無いから、督促は止まらない?
債務者の代理人として、弁護士が金融機関に取引記録の開示を求める場合、任意整理を受任したことを示す受任通知が同時に出されることが一般的です。
弁護士から受任通知を受けた時点から、金融機関は債務者への取り立てや督促を停止します。
弁護士に任意整理を依頼すれば、代理人として金融機関に受任通知を送付してくれますので、その時点から取り立てや督促は止まります。
これは自主規制や金融機関の業界慣習ではなく、貸金業法21条1項9号の規定ですので、違反した業者は行政処分を受けたり、刑事罰を科される可能性があります。
自分で任意整理の作業を行う場合、貸金業法21条1項9項は適用外になります。受任通知がありませんので、任意整理が始まったとしても、金融機関は取り立てを続けることができます。
交渉を行っている最中でも、借金の滞納があれば金融機関の取り立ては止まらず、督促状が送られてくることになります。
任意整理の大きなメリットの一つが、借金の催促が止まることなので、弁護士に依頼しないと任意整理のメリット半減ですね
まとめ
任意整理を自分でやることのデメリットが、メリットよりもはるかに大きいことをお分かり頂けたのではないでしょうか。
任意整理に伴う複雑な計算や手続き、金融機関との交渉などに時間がかかればかかるほど、借金は増えていく可能性があります。
任意整理の手続きは弁護士などに任せて、債務者は自分の仕事などに集中し、できるだけ早い完済を目指す方が合理的だと言えます。