家の購入は、人生の一大事。
高額な買い物であるため、住宅ローンを組む人がほとんどでしょう。
特にペアローンでローンを組むと、住宅控除が夫婦で二人分利用できるなどメリットが大きく、高めの物件でも購入できます。
でも、ペアローンは離婚した場合など、のちのち借金問題が起きやすいことも有名です。
ペアローン相談「新居購入の為、5年前に住宅ローンを組みました。
住宅ローンを借りようとしたとき、地元の銀行で話を聞いてきました。
すると、私たちは二人とも正社員の夫婦共働きなので、ペアローンがおすすめとのことでした。
税金が戻ってくる金額も大きくなるというメリットがあるので、結局ペアローンにしました。
しかし、2年前、妻が妊娠して仕事を続けられなくなりました。
しばらくは、わたしの1人分の収入で耐えていましたが、もう限界です。
どうしたら良いでしょうか?」
住宅金融支援機構の「フラット35」という住宅ローンだと連帯債務者で借りられる、と言われましたが、銀行自体の住宅ローン商品にはそれがなく、連帯保証人かペアローンになると言われました。どちらも似たような言葉や条件で、よくわからなくなりました。どちらの方が良いということはありますか?
連帯債務者と連帯保証人、どちらもよく似た名前で、よく似た内容ですから、混同しがちですが、自分に一番合った借り方を選びたいですよね。
詳しく説明します。
ペアローンのメリットとデメリット
夫婦共働き世帯の場合、住宅ローンの組み方には、大きく分けると2つの選択肢があります。
1つ目は夫婦どちらかのみが住宅ローンの借入名義人(=債務者)となり、もう一方は全く関与しないケース、2つ目はペアローンで夫婦二人がともに借入の当事者として関わるケースです。
前者は単純で分かりやすいですね。
しかし、後者のペアローンはちょっと複雑です。
一口に「当事者として関わる」と言っても、関わり方の違いで3つの種類に分かれるからです。
3種類の違いは後で詳しく説明するとして、そもそも、なぜ、夫婦2人ともが当事者となる必要があるのでしょうか?それは、貸す側(債権者)、借りる側(債務者)両方にメリットがあるからです。
貸す側のメリットは、貸したお金が確実に回収できる、という保証が得られることが最も大きなメリットです。
逆に借りる側のメリットを具体的に言うと、
- 「1人で借りるより、大きい金額が借りられる」
- 「税金の控除が2人とも受けられる」
- 「団体信用生命保険に加入できる」
の3つです。
1番は、希望のマイホームが、どちらか1人の収入ではちょっと手が届かない物件だった場合にうれしいメリットです。
一生に一度の買い物ですから、妥協したくないですよね。
でも、相談者さんのように、大きな金額が借りられることがデメリットになるケースもあるので注意が必要です。
2番は、1人で住宅ローンを組むと、1人の収入からしか税金の住宅ローン控除が受けられません。
しかし、せっかく2人とも働いているのなら、2人ともから住宅ローン控除が受けられた方がお得ですよね。
住宅ローン控除は年間で一人40万円が限度なので、二人分だと80万円まで最大で控除できます。
しかし、80万円控除するためには、夫婦合計で8,000万円も借り入れる必要があり、大きな借金を背負うリスクがあります。
3番は債務者にもしものことがあり、ローンが返せなくなった場合、団体信用保険に入っておけば安心です。
共働きで二人の収入で一つの家計なら、2人とも団信に入れたら、どちらか片方になにかあったときでも安心して暮らせますね。
こちらは特にデメリットは無いです。
ペアローンで困ったら
ペアローンはメリットが大きい反面、夫婦どちらかの収入が下がったら、大きな借金に苦しむことが分かって頂けたかと思います。
相談者さんのように、奥さんがもう働けなくなったりした場合は、たちまち返済に苦労することになります。
その場合は、借金の減額を金融機関に依頼するしかないでしょう。
弁護士さんに相談して、金利のカット、元本の削減などをお願いしてみましょう。
ペアローンを組む方法
ペアローンは、お互いに主債務者となり、お互いに連帯保証人となりあった2本の住宅ローンを契約する、という方法です。
1本は夫が主債務者で妻が連帯保証人、2本目は妻が主債務者で夫が連帯保証人、という形です。
メリット①の収入合算 | 収入を合算するというよりも、夫のみの収入で借りられる金額と、妻のみの収入で借りられる金額を合わせることで、結果的に借りられる金額を増やせる |
メリット②の住宅ローン控除 | それぞれが主債務者になった借入金額の部分について控除を受けることができます。当然、登記簿上の持ち分も、それに合わせておく必要があります |
メリット③の団体信用生命保険 | 2人ともが主債務者なので、2人とも加入することができます。 |
しかし、それぞれが主債務者の部分についてのみになりますので、もし片方に不幸があった場合でも、団信でカバーされるのは持ち分のみとなるため、残った一方の住宅ローンは残ったままになってしまいます。
また、ペアローンは、2本の住宅ローンを契約することになりますので、事務手数料や契約印紙代など諸経費が2倍かかってしまうというデメリットも忘れてはいけません。
夫が主債務者、妻が連帯保証人になる方法
連帯保証人の場合は、主債務者が「金銭消費貸借契約」をし、連帯保証人は「連帯保証契約」という別の契約をします。
連帯保証人は、住宅ローン以外の借金の場合の連帯保証人と同じく、主債務者が問題なく返済をしている間は、支払いに関与することはありません。
主債務者が、支払いが滞った時に初めて、連帯保証人が請求を受ける、という形になります。
例えば夫が主債務者となり、妻が連帯保証人となるケースで考えてみましょう。
この場合、メリット①の収入合算がどれだけできるかというのは、各銀行によって異なります。
しかし、近年、各銀行は、個人の連帯保証人をつけるより、債権回収会社や各県の保証協会など、保証会社を連帯保証人につけるようにオススメしているところが多くなっています。
そのため、妻が連帯保証人になるケースというのは、ほとんどが収入合算をするため、といっても過言ではありません。
銀行によって、収入合算が妻の収入の全額であったり、半分であったりと様々ですので、住宅ローンを組みたい銀行で確認してみるのが確実です。
次に、メリット②の住宅ローン控除と③の団体信用生命保険については、主債務者のみが対象となります。
そのため、妻の収入から税金の控除は受けられませんし、妻に不幸があったとしても団体信用生命保険でカバーされることはありません。
夫婦2人が連帯債務者になる方法
連帯債務者とは1つの金銭消費貸借契約に対する主債務者が2人、という契約方法です。
先ほどの連帯保証人の場合、主債務者が支払い不能な時に初めて連帯保証人に請求がいく、ということでしたが、連帯債務者の場合は、2人ともが主債務者、つまり「メインで借りた当事者」となりますので、債権者はいつでもどちらに対してでも請求をすることが可能となります。
相談者さんの質問にもあったように、この連帯債務者契約の取り扱いで最もメジャーなのが、住宅金融支援機構の「フラット35」です。
その他の金融機関ではほとんど取り扱いがありません。
連帯債務者の場合、メリット①の収入合算は、全額可能となります。
またメリット②の住宅ローン控除も2人ともが受けられます。控除の金額は、不動産登記上の各自の持ち分割合に応じて算定した金額となりますが、各自の支出の負担割合と、登記の持ち分割合を合わせておく必要があります。
基本的に、登記自体は好きな割合にしていいのですが、負担割合と持ち分が大きく異なっている場合、税務署から贈与税を徴収されてしまう恐れがあるので、とても慎重に行う必要があります。
メリット③の団体信用生命保険については、加入自体が任意加入となるため、どちらか片方だけを対象にする方法と、2人ともを対象とする方法を選ぶことができます。もちろんリスクは非常に高いですが団信に加入しない、という選択肢もあります。
しかし、通常の銀行が取り扱う住宅ローンでは、団体信用生命保険の掛け金は金利に含まれていますが、フラット35では別扱いになりますので、毎年金利とは別に掛け金を支払わなければなりませんし、掛け金自体も銀行の住宅ローンに比べて割高であることは覚悟しなければなりません。
番外編・夫婦の片方だけが住宅ローンを組む方法
さて、これまで夫婦両方が当事者となって住宅ローンを組む方法を詳しくみてきましたが、夫だけの名義で契約し、保証会社をつけたため、妻は連帯保証人にもならない、というケースにも、もちろんメリットがあります。
それは、教育ローンやカーローンなどを組みたいときに、夫名義で借りられなくても妻名義でなら借りられるというメリットと、残念ながら離婚となった場合は財産分与が簡単である、という点です。
また、収入合算をしないので、世帯年収に対して住宅ローンが低めに設定されますから、比較的余裕がある借入金額となります。
そのため、妻が出産などで退職した場合や、夫の転職で収入が減った場合でも、それらの収入変動が家計に対する影響が少なくて済みます。
まだ子供がおらずこれからほしいと思っている夫婦の場合や、50才を過ぎており住宅ローンの完済より前に定年退職を迎えててしまう夫婦の場合は、収入変動の可能性が高いため、共働きといえども片方だけの名義で住宅ローンを組むというのも、選択肢としては大いにアリなのです。
まとめ
平たく言うと、連帯保証人にするか、連帯債務者にするかというのは、フラット35を使うかどうか、と言い換えてもいいでしょう。
フラット35を使える条件を満たしていなければ必然的に連帯債務者を選択することはできません。
また、収入合算をする必要がなければ、連帯保証人、連帯債務者、ペアローンのどれも選択せず、一人で住宅ローンを組む、という選択肢もリスクを減らすという点ではとてもメリットがあります。
住宅を購入するときは、つい気が大きくなってしまいがちですが、住宅ローンもれっきとした借金、負の財産であると気を付けて、希望と予算のバランスを見極めることが重要です。
自分に一番合った契約方法を見つけられるといいですね。