友人の連帯保証人になることはそもそも何のメリットもありません。ついつい承諾してしまった連帯保証人を冷静に考えれば、やっぱりやめたいって思って不思議じゃない、というより懸命の判断でしょう。
一度引き受けてしまった連帯保証人をやめれるのか?
その方法を探っていきます。
連帯保証人をやめたい理由
連帯保証人については知れば知るほど、気軽になってはいけないものと思うはずです。
連帯保証人の基礎知識はこちらにまとめました。
連帯保証人とは、債務者(お金を借りた人)と連帯して借金を保証する人のことですが、自分が借りたのと同様の厳しい返済義務を負います。
似たような債務保証である「保証人」というものがありますが、保証人は「主債務者(借りた人)に請求してください」「借りた本人に財産が有るので、そちらに請求してください!と債権者(お金を貸した人)に主張できるのに対し、連帯保証人にはそんな権利はなく請求されたら自分の財産を売ってでも借金を返済しなくてはなりません。
だからこそ、連帯保証人への印象は「怖い、絶対になってはいけないもの」なのです。
なお、ただの「保証人」と「連帯保証人」の違いが分からない人は、以下のまとめているのでご参考にしてください。
連帯保証人になってもよいのは、本来は自分で借りたと考えてよいような性質の借金(夫婦で共同でマイホームローンを組む、など)だけなのです。
いくら友人・知人・親戚・家族に懇願されても、自分で借りたって言っても良い借金以外には連帯保証人にはなってはいけないのです。
情に訴えられるように懇願されても、報酬・謝礼に釣られてなど、本意ではない連帯保証人を引き受けたものの、冷静になってみて「やっぱり辞めたい」という人のために、そもそも辞める方法はあるのか?
連帯保証人を辞めるのは非常に難しい
一度引き受けてしまったからには、辞めることは困難。
あなたの勤める会社が何か大きな機械などを買う契約をして、それを突然破棄したら、機械を売る予定だった会社はすでに様々な準備をコストをかけて行っているので、損をしてしまいます。
そのため、契約は簡単には破棄できないし、破棄するなら相応の損害金の支払いを求められることもあるでしょう。
連帯保証も契約です。途中で「連帯保証人を辞めたい」考えれば、主債務者(お金を借りた人)や債権者(お金を貸した側)に連絡して、辞めてしまうこともできるのでしょうか。
連帯保証人という制度は貸す側にはメリットがありますが、連帯保証人になった人にとってはデメリットや危険ばかりです。できれば辞めたい?でも、実際のところはどうなの?これは重要な問題ではないでしょうか。
簡単ではないけれど……可能性はなくもない?
連帯保証人になってしまうと、「辞めます!」の一言で簡単に辞めることはできません。もちろん、会社のように辞表を提出すれば辞められるわけでもありません。
なぜなら、「連帯保証人」は主債務者(お金を借りた本人)の債務を、借りた本人と同様の責任を負って保証する人だからです。
簡単に「辞めます」で辞めてしまえれば、お金を貸した側は困ってしまいます。
主債務者が返済してくれるか不安でお金を貸すことを断ろうと思っていたけれど、担保として連帯保証人を立てると言うから貸したという債権者もいるはずです。
連帯保証人になるということは、本来お金を借りることができなかった人の借り入れを、自分が支援している、ということなのです。当然責任は伴いますよね。
連帯保証人があっさり辞めてしまえるものならば、主債務者が返済から逃げてしまえば、債権者が大きな損をこうむってしまいます。
住宅ローンを借りているとして、保証会社(連帯保証人代わりの存在)が「辞めます」と言い出し、その上、簡単に辞めてしまえれば、皆さんも銀行も「勝手に辞めないで」と言うでしょう。
一度結んだ連帯保証人の契約は、基本的に辞めることはできません。ただし、いくつか辞めることがえきる方法やケースがあるので、ご紹介します。
解除の手続きや方法は?
債権者に解除を承認してもらう
お金を貸した側である債権者に「連帯保証人を辞めさせてください」と申し入れ、承諾してもらえれば連帯保証人をすぐに解除できます。
ただし、連帯保証人を解除するということは、返済の保険が消えるということなので、現実的には債権者はまず了承することはないでしょう。
別の連帯保証人を用意する
別の連帯保証人を用意して債権者に交代を認めてもらう方法です。
あなたと同様の信用保証ができる連帯保証人が用意できれば、債権者が損することはないように思えます。
しかし、現実に、自分から連帯保証人を代わってくれるという人はまずいないでしょう。
あなたが、連帯保証人をやめたいって思っている理由を考えれば納得できると思います。
もし奇跡的に連帯保証人を引き受ける人を見つけたとしても、債権者が了承してくれるには、十分な信用力がある人でなくてはいけません。
新しく連れて来た人が連帯債務者として適格か分からないので、債権者に十分に説明する必要は出てきます。
この方法でも連帯保証人を辞めることは可能ですが、現実的か?と問われると、首を横に振らざるを得ません。
詐欺によって契約した場合
詐欺や嘘・詐術によって連帯保証人になってしまったケースは連帯保証を取り消し可能です。
連帯保証の契約と知らずに、または騙されてサインさせられたようなケースですね。この場合は、まさか連帯保証人にされるとは思っていなかった!そんな意思はなかった!ことを示せれば、保証契約は無効です。連帯保証人の解除を申し入れましょう。
この他に、実際はほとんどお金なんか持っていないのに「十分返済できるだけのお金を持っているから」とだまされて連帯保証人にされたケースも騙されたケースにあたります。もし債務者がお金がないことを知っていれば連帯保証人を引き受けることはなかったわけなので、不実の告知があったとして解除を申し入れることが可能です。
脅迫されて契約した
連帯保証人にならないと殴る・殺すなど暴力・脅しや脅迫により連帯保証人にされてしまった場合は、それを理由に解除の申し入れが可能です。
まあ、脅迫して連帯保証契約させるなどというのは、法治国家の前提になる根本部分への挑戦(犯罪)なので、解除できてあたりまえです。
勘違いして連帯保証人になった
これについては解釈が難しいのですが、自分が理解していた契約内容と連帯保証人契約の内容が異なっていれば「勘違いしました!」を理由に辞めることができる可能性があります。
ただし、「だまされた」「勘違いした」などは認識の問題なので、内心のことは証明が難しく、債権者は「そんなはずないだろう!」と、簡単には納得してくれないでしょう。
連帯保証だけでなく、詐欺や錯誤での取り消しは訴訟によって解決するしかないでしょう。
勘違いや詐欺を理由で連帯保証人を辞めてしまいたい場合は、訴訟を前提に弁護士に相談することをお勧めします。
書類を勝手に書かれた!代筆や押印
詐欺的な話ですが、連帯保証人の契約書など書いておらず、他人が勝手に記載をした場合は、その契約は常識的に無効でしょう。
債務者や債権者が代筆し押印したなど、「勝手に契約書にサインされた」「勝手に押印された」「印鑑を悪用された」という場合は、契約自体の無効を主張することが可能です。
金融機関では、お客さんの代わりに判子を押すことは禁止されています。なぜかというと、銀行員がお客さんの判子を押したり、名前を代筆したりすると、こういった問題に発展するからです。
しかし、あなたの印鑑の管理があまりにもひどくて、子供が勝手に持ち出して契約した、みたいなケースでは、印鑑の管理方法に過失があるので必ず連帯保証契約を無効にできるとは限りません。
未成年の連帯保証
未成年が結んでしまった連帯保証契約は取り消しできますし、親に勝手に未成年の子供が連帯保証人にされてしまったとすれば、それは無権代理ですので連帯保証の責任はありません。
債権者にこれらの理由と連帯保証人を辞めたいと通知すれば、辞めることができる可能性があります。
未成年を通知したとしても債権者が簡単に辞めることを許すとは限りません。
連帯保証人を正当なこれらの理由があって辞めるとしても、最終的には裁判上で争うことになる可能性が高いでしょう。裁判でこれらの理由が認められれば連帯保証人を堂々と辞めることができます。
しかし、あなたの印鑑等の管理が悪かったせいで、未成年に勝手に契約された場合は、連帯保証契約は解除されるかもしれませんが、過失から債権者に損害を与えた損害金の支払いを求められる可能性はあります。
気をつけるべきは債務の承認?
連帯保証人を辞めたいと考えている場合、絶対にしてはいけない行為があります。それは「債務の承認行為」です。
債務の承認とは、「実際に債務があると認める行為」であり、債務の承認行為とは「自分が連帯保証人であると認めているように見える行為」を指します。
具体的には
・弁済(一部、全部問わず借金を返す。利息を返す)
・猶予の申し入れ(返済を猶予して欲しいとお願いする)
・書類を書く(念書などの書類に記名押印する)
特に気をつけなければならないのは、支払いをしても債務の承認行為にあたることからせずにいて、相手から「支払はまだですか?」と電話がかかってきた際に「ちょっと待ってください」など返済の意思があるように応じてしまうことです。
これだけで返済するつもりがあるように見えるので、債務の承認行為にあたる可能性が高いのです。
債務の承認行為があると連帯保証人を辞めることが難しくなるので、基本的なスタンスは無視を貫くのが良いでしょう。
連帯保証トラブルを抱えたら、弁護士など法律の専門家を頼る
連帯保証人をどんな理由で辞めるにしろ、債権者にとっては返済してもらえない可能性が高まるので、簡単には認めません。
連帯保証人を辞めるためには、まず間違えなく債権者である金融機関と訴訟を起こし、裁判所で争うことになるでしょう。
そのため、なるべく「連帯保証人を辞めたい」と思ったら、すぐに弁護士に相談することをお勧めします。
連帯保証人を辞めたいと思いつつずるずると放置すると、強制執行や差し押さえの危険もあります。
特に給与への差押えは、会社にばれてしまうため致命的で、社内の評判や社会的な信用問題に繋がります。また、対応しないでいるうちに債務の承認行為をしてしまうことも考えられます。
なるべく早めに法律の専門家に相談し、事を進めてもらった方が安全です。
連帯保証人をやめられるかについてのまとめ
連帯保証人は簡単にはやめられませんが、一定の条件を満たせばやめることは不可能ではありません。
勝手に書類を書かれた場合や、金融機関で連帯保証人契約を結ぶ時に金融機関の社員や主債務者が自分の判子を使って押印した場合、詐欺や脅迫によって連帯保証契約を結ばされた場合などは、連帯保証契約を結んでも解除できる可能性があります。
ただし、最終的には、お金を貸した側にとっても大きな損失を被りかねない問題なので、裁判で決着をつけるケースが大半です。
そのため連帯保証契約を解除したいと思ったら、まず弁護士に相談すべきでしょう。