生活保護受給者は貯金ができないため、万が一の時のための葬式費用を残しておくことが出来ません。
でも、自分が死んだときのことを考えたら、残された人に、迷惑はかけたくないですよね。
生活保護受給者は葬儀をどのように行えばよいのでしょうか?
また、香典の受け取りや納骨、戒名に必要なお金はどうすれば良いのでしょうか?
そんな疑問にお答えします。
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生活保護受給者の葬式
生活保護と葬式が関わる場合、大きく分けて以下の3パターンがあります。
- 生活保護受給者がなくなった場合
- 生活保護を受給していた身内がなくなった場合(葬式主催者側のケース)
- 生活保護受給者の葬式に参加する場合
この場合、葬儀はどうしたら良いのでしょうか。生活保護法や世間の常識などから簡単にご紹介しましょう。
火葬と埋葬は絶対に必要と法律で決められている
日本の法律では火葬と埋葬は、火葬場以外で火葬をしてはいけないし、墓地以外に埋葬してもいけない、と法律(墓地、埋葬等に関する法律)で厳格に定められています。
なくなった人の遺体を墓地以外に埋めたら死体遺棄で逮捕されることになります。実際に2009年に葬儀代が出せないという理由で、亡くなった実母を山に埋めて逮捕された男性がいました。
人が無くなれば火葬と埋葬は必要で、それにはお金がかかります。
ではお金をためておくことが出来ない生活保護受給者は、火葬代などをどう工面したら良いのでしょうか。
生活保護法で定められている「葬祭扶助」
生活保護費で生活している世帯にとって、急に必要になる葬儀の費用は大きな負担です。
そのため、生活保護法18条において「葬祭扶助」というものが規定されています。
具体的には下記項目について扶助が与えられます。
- 検案(死亡の事実を確認)
- 死体の運搬
- 火葬又は埋葬
- 納骨その他葬祭のために必要なもの
もちろん、亡くなった人が金品を残していた場合はその分をまず葬儀費用に充て、足りない分を扶助することになります。
また、戒名代や通夜・告別式代も出ません。
生活保護者は絶対数で数百万人単位で存在するので、その人たちが火葬・埋葬できなかったら大変なことなので当たり前ですね。
戒名料はなぜ対象外か
戒名代は必要最低限ってわけではないので、葬祭扶助の対象から外されていることは説明しましたが、その理由はもう少し見ていきましょう。
なかなかわかりづらいお布施の金額や戒名料。
戒名料について2万円~20万円くらいが相場という人もいれば、20万円から100万円、あるいはそれ以上が相場という人もいます。
東京都生活文化局が2001年に行った調査によると、平均の金額は約38万円とのことでした。
そうなると、戒名料がないときにどうしたらよいのかが気になりますね。
実は、戒名はすぐにつけなければいけないものではありません。
ですから、お金を用意できるようになってから後からつけていただいても良いのです。
また、戒名のいらない場所に埋葬するという方法もあります。例えば永代供養墓では戒名のいらない場合が多いようです。
そう考えると戒名とは、値段の相場もなく、すぐにつける必要もなく、つけなくても埋葬できるということなので、必要性に乏しいと言えます。だから戒名料は葬祭扶助の対象外なのですね。
香典問題
香典や香典返しはお金が直接絡むので気になりますよね。
受給者が葬式を取り仕切る場合(主催者側)、生活保護者が葬式に参加する場合に分けて説明します。
受給者が葬式を取り仕切る場合(主催者側)での香典
生活保護者は収入が入ると生活保護の受給要件を満たさなくなるので、香典が収入かどうかは気になる人が多いでしょう。
結論から言うと、もらった香典は所得として扱われないため、香典は貰っても生活保護の受給要件から外れません。
しかし、香典返し代は葬祭扶助の対象外になっていますから気をつけましょう。
同じ理由で、生活保護受給者の葬儀であっても香典を持参して良い(相手に迷惑をかけない)ということになります。
生活保護者が葬式に参加する場合
また、生活保護費が少ないために遠方の葬儀に参加するための香典代を用意できない(だからもっと生活保護費をくれ)、と生活保護受給者が訴訟を起こしたこともありました。
これに対して「生活保護受給者に香典を持ってこいという人はいないのでは」「図々しいのではないか」と批判も多くありました。
葬儀を行う側が、生活保護者に香典の辞退を伝える方が良いかも知れません。
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葬祭扶助の申請方法
生活保護者は済んでいる地域から生活保護を受給していますが、亡くなった方が他の地域に住んでいた場合はどうなるのでしょうか?
生活保護者:東京在住
亡くなった方:千葉県在住
みたいなケースですね。
その場合は葬祭扶助は東京都に対して行います。
その際、葬祭扶助の申請には注意点がありますので、ご説明します。
- 費用の全額ではなく、足りない金額を扶助
- 火葬する前での申請が必要(火葬した後では不可)
また、葬祭扶助で葬儀を行う場合の注意点についてもご紹介します。
- 現物支給(葬儀社と自治体の間で葬祭費用の支払いが行われる。生活保護費としてお金を受け取るわけではない
- 葬儀社に自分で払ってはいけない(支払ってしまうと払う能力があるとみなされる可能性がある(葬祭扶助はあくまで足らないお金を補う制度)