個人再生は住宅を維持しながら債務を整理する方法ですが、住宅の価値がローンより高い場合は困った問題が生まれます。
これだと、実は資産を持っていてお金に余裕があるのに、資産を多額に残しながら個人再生(債務整理)を行うことになって、公平ではありません。
清算価値保障の原則
個人再生では、住宅を残せる代わりに自己破産を行った場合より多くの弁済をしなくてはならないという考え方があります。
財産が無い状態なら、1,500円超3,000万円以下の借金は最低弁済額300万円になる、など一律で計算できます。
最低弁済額の全体像はリンク先の表で確認してください。
こうした一律の表で計算できるのは、あくまで債務者に資産が無いからです。
資産があれば、その資産の金額が最低弁済額になります(一律計算で出した弁済額と、資産金額の大きい方が最低弁済額になる。
借金がある人が破産されたとしても、資産価値分は債務者が最低限受け取れるお金なので、資産価値分以下の返済額になるのは「債権者の利益を侵害している」ことになって、個人再生ができなくなります。
だから、資産を持つ人は、資産価値分は個人再生であっても返済しなくてはならないのです。
住宅がアンダーローンの場合
ここで冒頭の話に戻りますが、住宅の価値が高くて、住宅ローン金額を上回る場合です。
この場合、住宅ローンを上回る価値分は、資産を持っているっていう扱いになります。
住宅の価値が、ローンの残額を上回るってケースはかなり幸せなケースですが、こと個人再生に関してはよく注意しなくてはならない事項になります、
もし、借金が3,000万円あったとして、
- 普通の個人再生(住宅の価値が低い場合):再生後の借金300万円
- 住宅の価値の超過分が1,000万円あった場合:再生後の借金1,000万円
と、債務整理後に残る借金が増えてしまうのです。
個人再生前に住宅などの資産を処分したら
資産を持ったまま個人再生を行うと不利になる可能性があることが分かりました。
であれば、個人再生の前に、住宅や価値がある自動車などの資産の名義を変えたり、処分してしまったりすれば有利になるのでしょうか?
これについては明確にNoです。
だから個人再生前に処分したり、譲渡した資産は、清算価値に含めて最低弁済額を算出することになっています
アンダーローンの住宅があった場合、名義変更で資産を少なく見せるって裏技は使えないことが分かります。
財産の処分を隠したら
財産を隠したうえでの個人再生は、「不当な目的に基づいた個人再生」に該当するため、裁判所は認めてくれません(棄却します)。
同様のやってはいけないこととして
- 預金を家族名義の口座に移す
- 有価証券や生命保険など価値のある資産を、他人名義にする
などは財産隠しと同じなのでやらないようにしましょう。
住宅がアンダーローンの場合の個人再生は無意味
こうしてみていると、住宅がアンダーローン(住宅の価値が住宅ローンの価値を上回る)の場合、個人再生は無意味になります。
住宅の価値が邪魔をして、借金があまり減らなくなってしまうのですから。
しかし、住宅ローン以外の借り入れの金利が高くて、どうしても借金を減らしたい人も多いと思います。
住宅ローンの金利は2%程度でも、消費者金融から10%超の金利で借りているって人もたくさんいますから。
その場合、任意整理を使うこともできます。
住宅は手放したくないけど、金利などカットして借金の重みを無くしたいって人は、任意整理を検討してみてください。
住宅を手放しても良ければ、任意売却も良い手段
住宅に関しては一旦手放しても良いって考えることができれば、いろいろな手段が取れます。
任意売却なら競売で売るより20%以上高い金額で住宅を手放せるので、借金返済の大きな助けになります。
不動産担保ローンもあり
また、不動産担保ローンを借りるって手段もあります。
アンダーローンの表を再掲しますが、図の青い部分に担保価値があるので、不動産担保ローンを借りることが出来ます。
不動産担保ローンは、担保がある分、消費者金融より低利息です。
低利息で借りて消費者金融への返済に回すのは、借金返済に大きく貢献するでしょう。
まとめ
- 住宅の価値が、住宅ローンの価値を上回るアンダーローンは資産を持っているとみなされる。
- 資産があると、その資産金額分は個人再生を行っても返済しなくてはならない(最低弁済額)。
- 資産があると不利になるからといって、個人再生前に資産を隠したり処分したりしてはいけない。
- 住宅を残しながら借金の負担を軽くするのに、任意整理を使うという手もある。
- 住宅を売っても良いなら、任意売却も可。