借金を返済せずに放置している時、怒った相手から「やくざに債権を売るぞ」と言われたり、実際にヤクザから請求が来たりするという怖い経験を今まさにしている方もいるかもしれません。
そんな方はどう対処すればいいのでしょう。
すぐ警察へ相談していただきたいのが第一ですが、警察も、証拠がなければ動いてくれないことが多いです。
自力でなんとかしたい方は、まずはこれを読んで、冷静に対処してください。
「やくざに債権を売る」と脅されている段階での対処法
今、まだ実際にやくざから請求されておらず、貸し主から「やくざに債権を売るぞ」と脅されている段階の場合。
これは、完全に脅迫罪ですので、それをボイスレコーダーに録音する、LINEやメールで書かれた文面を保存しておく、など証拠を持って警察へ行きましょう。
ボイスレコーダーを買うお金がなくても、スマホのアプリで録音できるはずですから、有効に活用してください。
また、支払をせずに相当長い期間が経過しているのであれば、債権が時効ではないか確認してみましょう。債権の種類によりますが、2~5年程度で時効の援用が主張できる可能性があります。
時効についても調べてみてください。
ただ、相手がヤクザの存在を出してくるのは、怒っている、恨んでいるなど感情面の問題がある可能性が大いにあります。
もし債権を支払う意思があるのであれば、弁護士に代理人になってもらい任意整理を依頼するなど、直接接触しない方法で返済の交渉をおすすめします。
そもそもヤクザに債権を売ることができるのか?
単純に言ってしまうと、相手がヤクザであっても、債権を売ることは可能です。
民法では、原則として債権を自由に譲渡することができると規定しています(民法第466条1項本文)。
しかも、借り手側の了承は要りません。
ですから、債権の買い取り人や譲り受け人が、どのような身分立場の人間であっても構いません。
債権譲渡の際の形式をきっちり守っており、実際にお金のやりとりがなされていれば、ヤクザであっても債権の買受人や譲受人になることには、問題はありません。
しかし、ヤクザが債権を回収することは難しい
債権譲渡や債権の売却自体が違法でなくとも、ヤクザが実際に債権を回収しようとすると法に触れる可能性が高くなります。
債権譲渡が回収のための形式だけのものであり、実際の金銭のやりとりが発生していない場合は違法。
債権譲渡が正しくなされていないのに回収することは詐欺行為ですので違法です。
債権回収の対価として報酬が発生していると違法。
これは、元の債権者がヤクザに債権を回収してもらう対価としてお金を払って、債権回収を依頼している場合です。
債権回収をすることで報酬が発生するということは、債権回収を仕事にしているということ。債権回収を仕事にできるのは、原則、弁護士とサービサー(債権回収会社)だけですから、これも違法です。
そのヤクザが債権回収を何度もやっていると違法。
何度もやっているということは、それを継続しているということです。
継続してやっているということは、生業にしているということです。
先ほど申し上げた通り、債権回収を仕事=生業にできるのは弁護士とサービサーだけですから、これも違法です。
逆に言えば、一回だけヤクザが債権回収を行うのは、通常の経済行為ということになり、違法ではありません。
債権回収時に脅しをかけていると違法。
債権回収時に自らがヤクザであると名乗ること自体、相手に恐怖心を与えますから、恐喝、脅迫になります。
もちろん、ヤクザからはっきりと身の危険を感じるような発言があればはっきりと恐喝・脅迫ですから、違法です。
また、債権を売却した元の貸し主も共犯として罪に問われる可能性があります。
このように、債権を回収する行為は、非常にデリケートです。
ヤクザの立場からは、債権を買い取ったとしても、ほぼ回収する方法がない状態におかれてしまうのです。
ヤクザは債権を買い取るのか?
さて、そもそも、「ヤクザに債権を売る」という行為は本当に可能なのでしょうか?
ここまで見てきたように、ヤクザが債権を回収するのは非常に困難です。
ならそもそも、ヤクザは債権を買い取らないのではないでしょうか?
回収困難で焦げ付いた債権を高いお金を出して譲り受けたところで、ヤクザにとってはリスクはあれども何のメリットも発生しません。
請求される側の人間が、元の債権をヤクザに売った、ヤクザが買った、と伝えられているということは、すでに、恐怖を与えるための行動に他なりませんから、違法状態になっています。
そもそも、普通の人は、暴力団員なのか、ただのチンピラなのか、元暴力団員なのかを問わず、ヤクザに類するような人とのおつき合いはほとんどないのが一般的です。
いきなり素性の分からない見ず知らずの一般人が、債権を買ってくれと言ってやってきて買ってくれるようなヤクザはほぼいないでしょう。
いるとすれば債権回収を生業として営んでいるヤクザだけ。しかしそれはすでに述べた通り違法な債権回収業者です。
それでもなお、あえてヤクザに債権を売り、回収を依頼するというのは、暴力的行為をもって請求を行ってくれと暗に依頼しているのと同じです。
暴力行為を依頼するのですから、警察に捕まれば元の貸し主も当然共犯です。また、そのような非常にリスキーなことを依頼し、うまく回収できなかったら、逆に貸し主側がヤクザに難癖をつけられて危険な目に遭う可能性もあります。
暴力団員などの反社会的勢力に債権を売る行為は、元の債権者が自ら危うい立場に身を置く自殺行為としかいいようがありません。
ヤクザから取り立てを受けたら返済はしてはいけない?
さて、そんなことは言っても、すでに実際にヤクザから取り立てを受けている場合、悠長なことは言っていられないかもしれません。
債権回収詐欺で実態のない債権を請求しているのなら返済する必要は全くありませんが、実際に債権が存在するのであれば、ヤクザ側からすれば回収する権利はあります。
ヤクザからの取り立て方が違法だったとしても、債権自体は存在しないことにはなりません。
「相手がヤクザだから」というのは、返済しない理由にはなりえません。
その場合は、すぐに警察と弁護士に相談してください。
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当然のことながら、警察と弁護士は連絡を常に取り合っているわけではありませんので、片方だけに相談しても、その内容はもう一方には伝わっていません。
それぞれに説明せねばならず面倒ですが、警察に連絡をして身を守る、弁護士に連絡して債権を整理するために動く、という両方を行って下さい。
警察に行っていることをヤクザや元の債権者に言うかどうかは、弁護士に相談してください。
言うことで逆に怒らせるなどの可能性もありますので、慎重に対応すべきです。
結局どう対処すべき?
まずは、すぐに警察に行くことをオススメします。
警察は腰が重いので、なかなか動いてくれないでしょうから、各県の消費者センターでもいいでしょう。
また、各県に「暴力追放運動推進センター」という組織があります。
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これは暴力団員による不当な行為の防止と、被害の救済を図ることを目的とした団体で、実際に暴力団員の不法行為に対し介入、対処してくれる組織です。
ヤクザ本人もしくは、その存在をちらつかせてくる相手からお金を要求されているという状態ですから、こちらの暴力追放運動推進センター(通称「暴追センター」)に相談してください。
暴力団対応を得意とする所属の弁護士が相談に乗ってくれます。